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異界の王女と人狼の騎士
第六十六話
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りで色白の男だった。気弱そうな眼で上司であろうと思われる田中を見る。

「このガキ、その女の子を連れまわしていたようだ。この子が助けを求めてきた。補導するぞ」

「え? ……えー!! 」
 俺は締め上げられながら愕然としてしまった。 
 なんと! どうやら俺が王女を深夜に連れまわしていて、隙を見て逃げ出した王女が警官に助けを求めたというシナリオがこの田中という名の警官の脳内で作り上げられたみたいだ。
 さっき王女が言った現場を見せろという話は記憶から消えている。

 たしかに、知らない人間から見たら、この金髪の美少女がこんな夜中に殺人事件のあった公園に来るということ自体がありえない。そしてその少女を追いかけて現れた高校生。二人は似ても似つかない顔をしている。つまりは肉親じゃない。イコール、少女は誘拐されていて逃げて来たのだ……。
 やれやれだ。

 佐藤という男もすぐにその推理に納得したようだ。しゃがんで王女の目線に合わせるとやさしい声で語りかけている。
「もう大丈夫だよ、怖かったかい? おじさんたちが守ってあげるから安心しなさい。あの変態野郎はもう一人のお巡りさんが取り押さえているから大丈夫だよ」

「まじですか? ちょ、ちょっと俺の話を聞いてくださいよ」
 俺は声を上げ体をねじる。

「静かにしろ、このロリコン野郎。ぶっ殺すぞ」
 しかし、即座に、警官とは思えないようなドスの利いた声で背後から田中が話すと同時に腕をねじりあげる。

俺でなければ悲鳴を上げているくらいの力技だぜ。
 これは不当逮捕だ。人権蹂躙だ。公権力の横暴だ。ありえないありえない。

「姫、なんとか言ってくれよ」
 暴力には暴力で応酬してもいいんだけど、そんなことしたら大変だ。俺は仕方なく王女に助けを求めた。
 彼女が否定してくれたら、それですべてが解決するんだしね。夜中にうろついていたことは仕方ないけどまあ謝ればすむんじゃないかなって勝手に思っていたし……。

 王女の瞳を見た時、俺はなんだかいやな予感がした。本能的な危険? いや単なる悪戯心かな。そんな無邪気な残酷さといえばいいんだろうか? そんなものが彼女の瞳に浮かんだように見えたんだ。

「なあ、姫ったら! 」
 俺は嫌な予感とうざったさの入り混じった気持ちで再度求める。
 王女は俺の目を見て、その後、佐藤と呼ばれた警官を見た。
 次の刹那、唐突に、ありえないくらい唐突に瞳に涙を浮かべると、警官の影に隠れるようにしがみ付き、声を上げた。
「こ、怖かったよ〜。こ、この人がずっと私の後をついてきて、怖くて、恐ろしくて、でも逃げられなくって、どうしようもなくって。うぇっうぇっ!! 」
 涙声で訴えやがった!

「貴様ぁ!! 」
 警官二人が同時に声を上げた、……
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