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異界の王女と人狼の騎士
第六十五話
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けよね、お前は」
 予想通りといった、結構馬鹿にした目で王女は俺を見る。

「まあ結果論からいえば大して成果はなかったっていえるけど、俺なりには情報は収集してるよ。まず学校は事件についてマスコミから取材を受けた場合、生徒の自主的な判断に任せるってことで特に規制はかけていなかったんだ。学校内での取材はさすがに授業に影響があるからってことで禁止したようだけれど、校外では権限が及ばないということで黙認してたね。だから俺までカメラを向けられちゃったよ」

「ふん。普通なら憶測だけで情報を出されて混乱するのを防ごうとするんじゃないのかしら」
 と、もっともな疑問。

「でも、マスコミへの情報の漏えいを遮断しようとしたって人の口には戸は立てられないからね。絶対、喋る奴が出てくるよ。それに拒否すればするほどマスコミも意地になって取材しようとするからね。その辺を考慮しての戦略みたい」

「なるほどね……。で、結局被害者は誰なの? 」

「殺されたのは俺の学年の生徒指導担当職員の戸次(べっき)先生だったよ、やっぱり。ネットの情報網はすごいよな。どこからあんな情報を仕入れてきたのやら」

「生徒指導担当っていうのはなんだ? 校則を守らせるための仕事か? 」
 王女もどこで調べたのか変な知識を披露する。

「まあ校則を遵守するように指導するのも仕事の一つだけれど、カウンセラーの資格も持っている教員がなるんだ。学校生活は勉強の悩みだけではなく、人間関係の悩みもつきまとうからね。いじめ問題や生徒の非行、家庭の問題……まあ、いろいろあるんだよ。そんな生徒たちの悩みを聞くという仕事もやってるよ。俺にとっては嫌な奴だったけど、それなりに信奉する生徒もいたようだよ。だから全般的には1年生の中では衝撃を持って受け止められていた感じだなあ」

「ふーん、お前以外には悲しみを持って受け止められたのか。……でも、お前は何も感じなかった訳ね。最低ね」

「ひっどいなあ、そんなんじゃないよ。あの先生は基本的にはいい人を演じているんだけれど、すごい裏表があるんだ。自分より弱い人間、何かをしても逆らわない人間……つまり生け贄を見つけたら容赦ないぐらいの行動を取る奴なんだ。ほとんどの生徒も父兄も。同僚の先生さえ知らないけれどね。その辺の隠蔽工作をきちんとやるとてもクレバーな奴なんだ。良くは分からないけど、普段いい人、がんばる先生を演じているせいかすごいストレスが溜まっているんだろうね。そのために弱い奴をいびる事でストレスのはけ口にしてるんだ。俺もアイツに何度も嫌な思いをさせられたんだから間違いない。そんな思いを何度もさせられているからなんだか複雑なんだ。そりゃ人が死んだら、そして近しい人なら悲しむべきなんだろうけど」
 戸次(べっき)にやられたいくつかの陰湿な仕打ち
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