第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十五 〜交州〜
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はっ。予章郡の一件、睡蓮様から改めてお詫びとお礼を、と」
「……その為に、わざわざお前を寄越したと申すか?」
「……それは口実です。失礼、お耳を拝借したいのですが」
こうまで抑えた話し声、周囲に聞こえる筈などないのだが……余程、内密の事のようだ。
「わかった」
「失礼します。お答えは、首の動きだけでお願いします」
そして、耳元で囁く。
「まだ、定かではありませんが。山越族の背後に、支援者がいるという情報を掴んだのです」
「…………」
「ただ、山越族に連なる土地は、ここ交州のみです。……私の言う意味がおわかりでしょうか?」
私は、首を縦に動かした。
「まだ、士燮さま一族が絡んでいるという確証はありません。これから調査を行いますが、くれぐれも油断なさいませんよう」
再び、首肯する。
「また参ります。では、これにて」
そう言い残し、周泰は闇に消えた。
……異民族との融和を掲げる士燮ならば、山越族と繋がっていても不思議ではない。
だが、その結果として睡蓮が手を焼いているのであれば、看過出来ぬ事になる。
これまでの印象では、そのような悪辣な企みを巡らすようには見えぬが。
……いや、結論を急ぐべき事ではないな。
「歳三殿」
この声は、疾風か。
素早く、私の傍へとやって来た。
「気付いていたか」
「はい。残念ながら、気付いたのは私だけのようですが。手の者は皆、手玉に取られたようです」
「うむ。あれだけの優れた隠密、それもやむを得ぬ事だ」
「……は。ところで歳三殿、何を耳打ちされていたのでしょうか?」
どのみち、話しておかねばならぬ事だ。
私は明命より聞かされた話を、余さず語る事にした。
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