第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十五 〜交州〜
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の活気はかなりのものだ。
店頭や露天に並ぶ商品は種類も豊富の上、見慣れぬ物も多い。
人々の顔立ちや肌の色も様々で、同じ漢の国内とは思えぬ程、異国情緒が漂っている。
「はわわ、凄いね愛里ちゃん」
「そ、そうだね……。街全体が活気に溢れている感じがする」
「にゃー。あれ、美味そうなのだ」
「あ、鈴々! 歳三殿のお許しなく勝手に行動するでない!」
……物珍しいのは、どうやら私だけではないようだな。
「どのみち、城に参れば良い話だ。皆、好きに見て回るが良い」
「やったー! よーし、食べまくるのだ!」
真っ先に飛び出して行く鈴々。
この場に愛紗がいたら、真っ赤になって追いかけ回していそうだな。
「土方様。それで宜しいのですか?」
「構わぬ。気遣いは無用だ、皆思い思いに行動せよ」
「……大胆な御仁ですね、ふふっ」
士燮は可笑しそうに言った。
結局、稟に風、星が私について来た。
疾風と山吹(糜竺)、それに紫苑は何やら調べたい様子であったし、朱里と愛里は知的好奇心を満たしに向かったようだ。
そして、士壱と士武は、先に城内へと戻っていった。
「これが珠江か」
「そうです。川幅は四里程あります」
城壁のすぐそばまで、川が迫っている。
地形を巧みに利用した天然の要害、そう呼ぶに相応しい構えだな。
「相当な繁栄を誇っていたのでしょうね、南越国は」
「ですねー。版図も南まで広がっていたとか」
「私もそこまで行った事はないが。士燮殿は、他国に出た事はおありか?」
「いいえ、趙雲様。これでも歴とした漢の官吏、外交官でもないのに勝手に国外には出られませんよ」
手を振る士燮。
「だが、異国の者が皆、穏やかとは限るまい? 時に争いになるのではないか?」
「仰る通りです。特にこの番禺は海にも面していますから、海賊が襲ってくる事もあります」
「それはあるでしょうね。ですが、陸の賊はどうなのですか?」
「賊と言いますか、異民族が侵入してくる事はままあります。南からもそうですし、西から山越も」
「やはりですか。それでも、それらにこの地を蹂躙させていないのは、このような城壁だけではありませんよね?」
ふむ、流石は稟だな。
私がいずれ訊ねようと思った事だが、それを読んだか。
「はい。……無論、軍としての備えを怠らないのが第一です」
そう言いながら、士燮は星を見る。
「む? 何か?」
「いえ。我が軍には、趙雲様のような優れた将はいません。ですから、兵の練度を高めると同時に、異民族に通じた軍にする必要があります」
「なるほどー。異民族さんからも、兵士さんを雇い入れたりしているとかですねー?」
「ふふ、お見通しのようですね。その通りです」
ただ敵対するよりも、取り込んでしまった方が対応はしやすい
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