第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十五 〜交州〜
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糧秣の無駄であり、異民族などへの備えが手薄になるだけだ。
兵も装備が特に目を引く事はないが、訓練は行き届いているようだな。
「しかし、噂に聞く土方様をこの目で見られるとは。感に堪えませんわ」
「ほう。噂とな?」
「そうです。黄巾党を各地で撃破し、荒廃した魏郡を見事に立て直した手腕。この地でも、聞き及んでいますよ」
「なかなかに詳しいではないか」
「はは、この地は交易商人が多数出入りする地です。そんな風聞の類ならいくらでも入ってきますよ」
「……私はただの武人。功績は皆、私と共に在る仲間の力に拠るものだ」
「確かに、ひとかどの御仁が多そうですね」
と、士燮は皆を見渡した。
「ですが、皆さんの意思でこうして土方様について来ているのでしょう? そうでなければ、このような辺境まで一緒に来る事はないと思いますが」
「士燮殿。辺境と仰せですが、それはただ単に洛陽から離れているだけの事。この地に住む人々からすれば、辺境などと卑屈になる必要もなく、またそんな事も思っていないと思いますが」
稟の言葉に、士燮はゆっくりと頷いた。
「そうでしたね。ですが、誤解しないで下さい。私はこの交州が好きですし、この地にいる事を卑下するつもりはありません」
「なら、それでいいじゃありませんか。歳三さんも、そんな考えは持たない御方ですから」
「そうだよね、愛里(徐庶)ちゃん。士燮さん、仰る通り、私達は確かに、自分の意思でこうしてご主人様についてきています。でも、その赴任先が仮に五胡や鮮卑だったとしても、それは変わりません」
「お兄さんがどういう人物なのか、それはおいおいわかる事ですからねー」
「……なるほど。本当に慕われているのですね、土方様は」
士燮は微笑みを浮かべた。
「為人は、これより見させていただきますが」
士姉妹は揃って跪いて、
「ようこそ、新たな州牧様。我ら一同、交州の民に成り代わり、歓迎致します」
「……うむ。私の方こそ、頼りにさせて貰いたい」
何と言っても、この者らは土着の豪族。
土地の事情に通じているのみならず、この地を支配してきたという実績は認めざるを得ない。
良き関係を築けると良いのだが、な。
数日後。
「あれが、番禺城です」
「前の刺史は、確か張津という人物と聞いているが」
「はい。……故人を悪く言うのは憚りがありますが、お世辞にも良き刺史様とは言えませんでしたね」
士燮がそう言うと、二人の妹も同感とばかりに頷いている。
「ほう。理由を聞かせて貰えぬか?」
「は。張津様は、荊州刺史、いえ今は州牧の劉表様と仲違いを起こしていました」
「ふむ」
「ただ、疎遠と言うだけならばまだ問題はなかったのですが、張津様は度々、荊州侵攻の為の兵を起こされました」
「……州
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