紗を裂く決別の詠
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軍の智者達”がそのようなモノであるか? 否、否だ。
強大なる覇王の望みは大陸の平定、支配。全てを呑み込まんとする者にして敵であれども誰彼を愛そうと約を掲げる人の頂点。
――その部下が、華琳の顔に泥を塗るようなこと出来ねぇわな。たかだか侮辱程度で完全な拒絶を示すなら、それはもう“曹操軍の軍師”じゃねぇ。侮辱を笑い飛ばせるような誇り高い人間になれと、華琳はいつだって示してるんだからよ。
内心で一人ごちる。
自分であれば緩く受け流して、というより自分から焔耶の話に乗っかってへらへらと笑い倒して誤魔化し通る。
二人の兵士達も全く気にしていないし、怒ることでも無い。
バカにされた事に対して詠が代わりに怒ってくれるのは嬉しいが、彼ら三人、果ては徐晃隊全てに於いては、笑い話にしかならない些末事。
詠は彼らを固定概念に縛られた目で見られるのが嫌だから怒った。死に物狂いで鍛え上げてきた彼らを、“彼らよりも明らかに劣るモノ”に見下される事が許せなかった……そういうこと。
それもまた誇りの一つだ。此処に華琳が居れば詠を愛でようと手を伸ばしただろう。
彼らの誇りを守らんと反抗しつつ、曹操軍の軍師として理知的に挑発し、コトを有利に進められる主導権をもぎ取ったのだから。
「お前……私だけでなく桃香様をバカにしたな……」
顔を真っ赤に染め上げた焔耶は怒りが頂点に達した様子。
詠の誤算は一つ。
もう少し頭の良いモノであれば良かったが、焔耶はそれほどよろしく無かった。
チャキリ、と武器の音が鳴る。
吊り上った目から殺気が叩きつけられた。
――其処で我慢出来なくなるのね。桃香に対して持ってるのは妄信か、それとも別のモノか……まあ、主の顔に泥を塗った自覚が無い程の単細胞だってことは分かったけど、武器まで抜くんだ。バカ過ぎ。
挑発に挑発を重ね、手を出させてもこちらの勝ちだ。使者である以上、劉璋への謁見前に刃を向けられたとなれば問題は大きくなり過ぎる。
戦をするに十分な理由を得られれば、華琳としても動き易い。不届きの対価として大きな果実を益州から得ることが出来るだろう。
だが、詠としてはそちらの結果は求めていない。こんな低レベルな言論に刃を持ち出されても……目的の達成には不十分で、秋斗と煮詰めた結果を得るには未熟な対応。
対価は増やせても縛りが増える。特に……劉璋に対して警戒を与えてしまうのがよろしくない。
――遣り過ぎたな、詠。
だから、と止めようと動いた秋斗であったが……幸いなことに、焔耶の後方からの怒声で時が止まった。
「動くな、焔耶!」
凛……と、場を引き締める麗しくも力強い一声。流れる黒髪は絶世と言わざるを得ない美しさ。整った顔の造形は男を魅了すること間違い
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