紗を裂く決別の詠
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が故に。
血反吐を吐きながら強くなっていったバカ共を知らなさすぎるが故に。
「……な、何が可笑しい」
「ふふ、くく……笑わせないでよね。“劉備軍の新参”が……あははっ」
堪らず、詠は腹を抑えて蹲る。
何故笑われているか分からずに、焔耶のこめかみに青筋が走った。
あ、やばい……と呟きながらも彼は止める気もないらしい。
「きっさまぁ……」
「新参なのは事実でしょう?」
「それがどうした。私は確かに益州で臣となったが、劉備軍でも一の忠義を桃香様に捧げている。新参だからと言って舐めるなよ」
「ふーん……実力と忠義は比例しないんだけど? 一番の忠義を持てば子供でも兵士に勝てるってことよね? ふふ、それじゃあ兵士が訓練を積む必要なんてないじゃない、おっかしぃ」
浮かべた冷たい笑みが余計に焔耶の精神を逆なでする。
挑発を繰り返す詠は、秋斗に肩を叩かれても肩越しに一つ視線を合わせて黙らせた。
――あ、やべぇ……怒ってる。
瞳の奥に燃えていた炎を見つければ、彼であれど震えないわけには行かず。
並んで後ろに立っていた二人の男達もそれを見てしまったのか、さっと視線を逸らした。
見定めるような目を焔耶に向けた後、詠は盛大に、彼女をバカにするようにため息を吐いて一礼を行った。
「突然のご訪問失礼致しました。
此度、益州に使者として参ったのは劉璋殿に向けてであり、劉備殿への使者ではありません。ただ、旧知であればこそ親交を深めようと思い参ったのでございますが、使者の連れも満足に通せぬ門番に出会ってしまっては私共も帰らざるを得ない次第に。
男であれ、彼らは元劉備軍にして隊を一つずつ預かる身。劉備軍の兵士にも知り合いの一人や二人居りましょう。屋敷の護衛とあれば旧来の兵士、彼らの友も居りましょう。男であるからと跳ね除け、思い出にすら浸らせてやらないとは……なんとも冷たく、懐の狭い軍になったことで。これでは率いるモノの器も知れる」
つらつらと語る。は……と両手を上げてため息を零した。
皮肉を存分に織り込み、明確にしつつも詠本人と彼のことを伏せた言論は正論でありながら暴論。個人に対して向けるこれ以上ない挑発。
感情的になるのは軍師では無い。感情を完全に消して追い詰めるのも軍師としては二流に等しい。
感情を隠しながら感情を操れるようでなければ軍師では無い。詠はそれをよく分かっていた。
智者だと名乗るのなら、敵対心や拒絶を推しだすだけのモノは三下。利を理解し利を求め、状況を判別した上で個人を消しつつ個人を混ぜ、本来の自身とは別の個人を作らなければならない。
内に秘めた怒りを抑えて鉄面皮で対応することは出来る。怒りのままに激昂し激発することも出来る。
しかしそれをしない。“曹操
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