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逆さの砂時計
対峙
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 ふっ……とアリアの力が抜けて、膝から崩れ落ちた。
 俺の足に寄り掛かってから、ぐらりと傾いた体がそのまま地面に横たわる。
 ……意識を手放したか。無駄な事をする。
 だが、これで十分に理解しただろう。
 現状を引き延ばしても大量の犠牲を作り出すだけ。大切なものを切り捨てる覚悟でもない限り、どう転んでも、お前は俺との契約を果たすしかないんだよ。
 そうして最後の力を解き放て。天属の女神として覚醒するんだ。
 俺に、声を聴かせてくれ。
 「お前の背に顕現する翼は、マリア以上に美しいのだろうな」
 片膝を突いて、アリアの頬を濡らす涙を指先で拭う。
 元々白い肌がより青みを帯びて、今にも死を迎えそうだ。心が折れるだけで生命力が消え去るのなら、アリアはとっくに死んでいたかも知れない。
 ……何処までも愚かな女。
 「クロスツェルの器は暫く預かる。殺しはしないさ……お前次第だが」
 アリアを見下ろしつつ立ち上がり、崖先に放置したクロスツェルをこの世界から吹き飛ばす。
 ついでにアリアも、陽光が満ちる草原へ飛ばした。
 「さて、望み通り遊んでやろうか? ベゼドラよ。悪戯好きには少し強めの仕置きが必要だろうが……」
 崖の際に立って軽く地を蹴り、垂直に落下。
 吹き付ける風が、アリアを表す水鳥と月桂樹を模したペンダントを奪い去ろうとする。
 だが、これが首を離れることはない。
 足裏が崖下の木に触れる直前で、空間を移動した。



 「ふぅ……」
 明るい陽光の下。本日何度目か知れない一休みの息を吐いた。
 どうにもこうにも、世界は広すぎる。目の前の景色はとても美しいが、生憎それをのんびり観賞してる暇は無い。休憩を挟んで、用が済んだら直ぐに次へ移動しなくては。
 しかし、このサクラとかいう木はなんとも不思議だ。年に一時期だけ、薄い紅に色付く可憐な花を咲かせる物だとは聞いていたが、実際にこうして見ると想像以上の幻想的な空気を感じる。
 師範が物凄く好きそう。
 「花弁を持ち帰って……も、喜ばないかな」
 自分で見て、触って、感じる事に喜びを見出だす人だから。本当に見たいと思ったら、どんなに時間が掛かっても自分の足で此処まで来るだろう。
 その行動力には敬服するばかりです、師範。
 泉を離れてから大体一ヶ月。
 急伝を使っていれば、そろそろ各国王室の決定第一報がアリアシエルに届いてる筈。ベゼドラさんが各宗教団体の後ろ楯を抑え終わった頃だ。
 後は各地で下層が起こすかも知れない乱闘を止めてもらうだけだが……ベゼドラさんにとっては多分、この辺りが一番難しい。手加減とか一切しなさそうだ。
 間違っても誰も殺さないでいただきたい。話がややこしくなるので。
 それにしても、一ヶ月……気配を消して動いてるとはいえ、レゾネ
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