対峙
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クトの反応が全く無いのは意外だ。狙いが外れたか?
数千年前は女神を立てるのに悪魔を利用したらしいが、現代に彼らほど判りやすい敵は存在しない。
ならば、対立する人間を同じ方向へ導くにはどうするのが手っ取り早いか、と考えた時……敢えて戦争を引き起こそうとしてるんじゃないかと思った。
それを女神アリアが人間には絶対不可能な力で、しかも双方に利益を齎す形……単純で分かりやすいのは怪我人の即時回復とかかな……で止め続ければ、一度や二度では傾かない認識も徐々に変化する。
人間は、圧倒的な何かを持つ者にいろんな意味で弱いから。
つまり戦場は、恐怖であろうが嫌悪であろうが歓喜であろうが、大勢の人間に鮮烈な印象を与える「本当の創造神アリア降臨」の舞台。
一度壇に上がった主役を途中で下げるのは至難の技だ。過去に栄光を掲げた者の登場となれば尚更。
だから権力者達を黙らせて、舞台が整うのを邪魔してみたのだけど。
……例え外れだとしても、争いを未然に防げば無用な負傷者を出さなくて済むし、女神アリアが救いの手を差し出す機会も僅かながら減らせて、信仰心を助長する心配もしなくて良い。
結果として、この行動は無駄にならない。
多分。
問題があるとすれば、肝心の二人が現れてくれない一点だ。
「私のほうが無駄骨にならなければ良いんだけど」
呼吸を整え、翼を広げて語り掛ければ、応えた風が木々の間を駆け抜けて ざぁっと見事な花吹雪を披露してくれた。
これでレゾネクトはこの地を荒らせなくなった。
と、思う。
レゾネクトの力が未知数である以上、自分の力が何処まで有効なのか……本当の所、絶対に大丈夫だって確信は持てない。
彼は以前、私に力が効かないと言った。私が潜在的に神の力を持ってた所為なのか、他に理由があるのか。結構重要な手掛かりになりそうな気もするのだが、自分自身を把握し切れてない所為で判断材料には弱い。今はただ「私には効かなかった」事実と、言葉を通してくれたもの達を信じるしかない状況だ。我ながら心許ないな。
……愚痴ても仕方ない。
とにかく、レゾネクトが現れるまでは考え付く限りの妨害工作を続けよう。
広げたままの翼で上空へ翔び上がり、薄い紅色の絨毯を視界の端に捉えながら次の場所へ向かう。
サクラの森周辺は人間が少なくて助かる。万が一にも見られてたら……
「っ!? ぅわ」
突然、正面から薄緑色に光る矢が飛んで来た。
現れてくれたのは有難いが、これはちょっと……前触れが無さすぎる!
避けて落下しかけた姿勢をなんとか立て直して飛来元に顔を向けると、まるで其処が地面かのように普通に直立で浮いてるレゾネクトが居た。
さすがは魔王。重力は完全無視ですか。
「……随分、いきなりですね」
「お
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