第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十四 〜揚州騒乱〜
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上がる。
疾風と愛里が率いる部隊が、鶴翼の外側から襲いかかっていた。
「は、挟み撃ちだぜ!」
「くそっ、卑怯だぞ!」
「卑怯はお前達であろう! この青龍偃月刀の錆となるがいい!」
鬼神の如き働きを見せる三人の猛将に、賊はじりじりと押されていく。
更に、賊の背後で砂塵が上がった。
同時に、矢が敵に降り注ぐ。
「星と、黄忠殿が到着したようですね」
「ああ。全員、気を緩めるな!」
「応っ!」
と、そこに何者かが突っ込んでくるのが見えた。
「テメェか! 俺様の邪魔をしやがったのは!」
大きな剣を手にした、身分のありそうな男が私を憎悪の眼で見ている。
「貴様が、サク融だな?」
「そうだ! ここは俺様が支配する土地だぞ。交州牧だか何だか知らねぇが、余計な事しやがって!」
「だったら、どうだと言うのだ? 貴様の行為は立派に皇帝陛下への反逆だが」
「やかましい! こうなったら、貴様だけはぶっ殺す!」
大きな刃風が、襲いかかってきた。
受けずに、それを躱す。
「ほう。力だけはあるようだな」
「この優男が! そんなチンケな剣で、俺様に勝てると思うなっ!」
「ふっ、チンケかどうか、試してみるか?」
「ほざけっ!」
ブンブンと、サク融は剣を振り回す。
威力はありそうだが、腕はさほどでもないな。
「ならば、此方から参るぞ」
「けっ!」
兼定を構え、間合いを一気に詰める。
「はっ!」
「そんな剣なぞ、叩き折ってやるわっ!」
ガキン、と剣がぶつかり合う。
……だが、この兼定を受けたのが、貴様の運の尽きだったな。
無論、倒れたのはサク融。
折られたのは奴の剣であり、兼定は見事、奴の脳天を切り裂いていた。
「敵将サク融、この土方が討ち取ったり!」
「黄忠、礼を申すぞ」
「いいえ。間に合って良かったですわ」
敵を掃討し、劉表の援軍との合流を果たした。
黄忠自ら率いてくるとは意外であったが、どのみち交州に向かうのであれば、妥当なところであろう。
「それにしても、酷い有様ですね……」
「敵を皆殺しにした事か?」
「……いいえ。庶人に対する、サク融の所業ですわ。人の命を、営みを何だと思っていたのでしょうか」
「……うむ」
「本当に、ありがとうございました」
と、黄忠は私に深々と頭を下げた。
「礼を申すのは我ら。何故、頭を下げる?」
「少なくとも、これ以上この地の庶人が苦しむ事はなくなりましたから。そのお礼ですわ」
「ならば、これでお相子だな」
「はい。土方様、お礼ついでに、真名もお預けしますわ。以後、紫苑とお呼び下さいませ」
「……わかった。私の事はどう呼んでも構わぬぞ」
「ええ。では、歳三様とお呼びしますわ」
紫苑を介して、劉焉に対して打った手も
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