第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十四 〜揚州騒乱〜
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ね。今の消費量で行くならば……此所でしょうね」
稟は、地図の一点を指さした。
「予章郡か」
「無論、見込みですので更に先に進める可能性もありますが。ただ、大きなずれはないかと」
「これだけの人数ですからね。建業でかなりの量を補給して貰えたのですが……」
「やむを得まい。我らは公用で動いている、それを名目に糧秣の補給を頼むより他にないな」
「ただ……」
「どうしたのだ、稟?」
「……はい。揚州南部は孫堅様の影響もあまり及ばず、また荊州に雪崩れ込む事が出来なかった黄巾党がかなり活動した地でしたから。耕作地が荒廃している可能性がありますね」
「つまり、睡蓮(孫堅)の威光を以てしても、郡太守らが従うとは限らぬ。そう言いたいのだな?」
「仰せの通りです。尤も、ない袖は振れない、という事もあります。此方としても無理強いは出来ませんね」
稟の申す通りだ。
権力を笠に着るような真似は好まぬし、さりとて力づくで入手すれば睡蓮の面目を潰すであろう。
まずは、状況把握からだな。
「稟、朱里。まず予章郡の現状を」
「それなら、もう間諜さんを送りましたよー」
そう言いながら、風が背後から現れた。
「はわわわ、ふ、風さん?」
「い、何時の間に?」
「それは乙女の秘密なのですよー」
……私も、全く気付かなかったのだが。
疾風のように、隠密たる素養でもあるのだろうか。
「ただですねー。あまり楽観は出来ないと思いますけどね」
「ならば、周囲の郡ならばどうだ?」
私の言葉に、三人は難しい顔をする。
「揚州南部は、異民族も入り込んでいる地域です。状況は似たり寄ったりでしょう」
「稟さんが言われる通り、治安の問題もありますけど……。農耕が盛んとは言えない地でもあります」
「逆に、此方の食糧を狙っての襲撃があるかも知れませんねー。あくまでも、可能性ですけどね」
いずれにせよ、難儀する事だけは変わらぬのか。
「では風。予章郡の状況把握は任せて良いのだな?」
「はいー」
「よし。糧秣の問題となれば、お前達だけでなく、愛里や山吹にも知らせておくべきだな。朱里と稟は対策を講じるように」
「御意です」
「はっ」
全く、次から次へと難問だらけだな。
……交州が、斯様に遠いとは。
皆の手前、弱音を吐く訳にはいかぬが。
数日後。
風が派遣した間諜により、予章郡の様子が明らかとなった。
「郡太守が殺害されただと? 本当か、風?」
思わず、愛紗が叫んだ。
「事実のようですよー。疾風(徐晃)ちゃん、そうですよね?」
「ああ。私の方でも調べたが、間違いないようだ」
「しかし、如何に軍権のない太守とは申せ、呆気ないとしか言えませぬな」
「でも、官軍はそんなに弱いのか?」
「残念ですが、このあたりの官
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