第3章 リーザス陥落
第72話 ホッホ峡の決戦T
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得られた、と言う事も多きだろう。
この先のレッド攻囲戦に向けて、意欲を更に燃やしながら進み続ける。
そして、後方。――ヘルマン軍本隊。
「…………」
ヘルマン軍・第3軍 将軍トーマ・リプトン
動かず、ただ 佇んでいるだけだというのに、その圧倒的な存在感は揺るぎないものであった。回りの部下達も直立不動で立ち続け、いついかなる戦闘が起きても、直ぐに動けるように配置されている。……何よりも、本隊は、これまでの兵達よりも目が一味も二味も違った。
「……どうかされましたか、将軍?」
トーマの傍らに控えているのは《ガイヤス・ヤスト》。
本隊の大隊長であり、トーマの腹心。思案げに周囲を見渡し続けるトーマに、声をかけた。
「いや……地図で見る以上に、ふせるのに利のある地形だと思ってな」
「それは……ええ、そうでしょう。ですが、その為の夜間進軍でしょう? 将軍の命が適切かと思いますが」
「うむ。……そうなのだがな。先遣のランドスター隊の様子はどうだ?」
「向こうは出来るだけ急いでいるようです。そろそろ、伝令同士の行き来にも時間が必要になってきますね」
「うむ。……そろそろ行こう。輸送隊のことを考えれば、あまり速度を上げることは出来んが、可能な限り 早く追うぞ」
そう言うトーマの眉間には皺が、少し深くなっていた。
「何か心配事でも? ランドスター副隊長から、偵察の報告も来ておりましたが……」
「……いや、確たるものはない。セピアも、十分に警戒を、と言っておった。……知将バレスのおる解放軍じゃ。警戒を強めるに越したことはない。……それに、単に儂が不吉な地形に臆病風に吹かれただけかもしれん。……だが」
セピアの報告はしっかりと受け取った。
優秀な兵士であり、兄のフォローも十分にやってくれている信頼出来る部下だ。
だが、セピアはしきりに言っていた《警戒》と言う言葉。自信のない情報じゃなく、はっきりと 得た情報。……それが餌の可能性も捨てきれない、と言う事もあるが、時間をかければかける程、不利になる可能性も捨てきれないのだ。
ならば、その情報を信じ、前に進む方が得策だともいえるのだ。
そして、……トーマの戦場の勘。
幾千の戦場を駆け巡ってきて磨かれたもの。それが警鐘を鳴らしているのだ。
「我らも警戒を強めよ。……ランドスター隊にも伝令だ。より警戒を、とな。……それと」
トーマが命令を下しかけたその瞬間だった。
「―――――っっ!?」
ガイアスの耳には確かに届いた。
そして、トーマの耳にも。……眉間の皺の溝がかなり深くなる。
――聞こえたのは、遠くから聞こえる鬨の声。そして《砲》の爆裂音が重く低く、
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