第二章 【Nameless Immortal】
弐 見えぬ分水嶺
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てくれるとはね。ほら、やはり優しい」
クラリーベルが眉を顰め嫌そうに表情をゆがめる。
それを見て自分の考えは間違っていないとカリアンはククと笑う。
チケットを出すなら最初の時点で出してもよかったのだ。十分に脅す道具になる。
それにその用意を知られるのは不利に働く可能性も大きい。破談したのならチケットを使いさっさと黙って出ていけばいいのだ。
だからこそ今になって出したのはそれこそ一応の牽制でしかない。
踏み込もうとしてきたカリアンへの最後通告という見方もあるにはある。
だがそれにしてはクラリーベルは何も言葉を発しなかった。性格からしてそれと匂わす勧告や軽口があってもいいはずだ。
ならばこそただの牽制の道具でしかない見せかけの脅しだろうとカリアンは判断した。
最終的には切る手札だが可能な限り切りたくはない。だから最終的な手段を先に掲示し相手に自制を求めた。
場合によっては協力してもいい。だがこっちが線引きしていることは弁えてくれ。
譲歩の余地があることを暗に示している。何とも優しいことだとカリアンは思う。
「君も難儀なことだね」
「色々務めがあるんですよ。そう思うなら自重してください」
否定しないのだなとカリアンは思う。
「……拝見します」
実に嫌そうな顔をしたクラリーベルが写真を受け取る。
正常な方向で、逆さで、少し離して、少し近づけてとクラリーベルは映っている物を見る。
先ほどまでとは違った意味でクラリーベルは眉をひそめる。
「これはどこで?」
「この間のことを教訓にしてね。探査機を飛ばした外部調査を行う様にしたんだ」
「いい心がけだと思います」
「それはどうも。出来ればそういった意見も君たちからは……そんな目で見ないでほしいね。まあこの話は後にしよう。その写真は先日飛ばした探査機が撮った物だ。現時点でのツェルニの進行方向上にあるものだ。遠くからで画質も荒いが気になったものでね」
「……これを知っている人はどれだけいますか」
「私とその探査機の関係者、それと他数名くらいかな。口止めはしてあるがつまりそういうことだと」
テーブルの上にクラリーベルは写真を置く。
写真は荒野の中にある山を映したものだ。緑の欠片もない荒れた山肌の一部が変色していた。ボヤけて見づらいが「ナニカ」が山の斜面に張り付いている様にも見える。
周辺から推測してその「ナニカ」は小山ほどの大きさだろう。
「恐らくは御察しの通りだと。断定できませんが大きさからして期を経た雄性体でしょう」
「そうではないことを願っていたがやはりか」
汚染獣。その脅威が再びツェルニへと鎌首を向けていた。
「幼生体と比べるとそれはどれくらい……」
「危険は格段に
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