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赤い靴
2部分:第二章
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カイロの暖かさを感じながら松本に問うた。
「そのうち出る」 
 その問いへの返答はこうであった。
「そのうちな。待つんだ」
「あまり待つのは俺の性分じゃないんですけれどね」
「いつも言ってるだろ」
 不平を述べる金田に釘を刺すことも忘れない。
「刑事は待つのが仕事だってな」
「そうですけれどね」
「わかったら待て」
 それをまた言って再度釘を刺す。
「いいな。とにかく待つんだ」
「わかりました。それじゃあ」
「わかってるといいんだがな」
「わかるように努力します」
 そんなやり取りをしながら張り込みを続ける。やがてクリーム色のトレンチコートに間深い帽子を被った如何にもといった感じの男が公園の前をうろつきだした。二人はその男の姿を認めてすぐに警戒態勢に入ったのだった。
 まずは金田が松本に問うた。
「松本さん」
「あいつか」
「ええ。どう思いますか?」
 今度は真剣な問いだった。声もそうなっている。
「あいつは」
「見た目では怪しいな」
「ですね。やっぱり」
「そうだ。それに」
 ここで目撃例が出た。
「似てるな」
「そうですね。モンタージュにはそっくりです」
 金田もこう答える。目はその不審者から離れない。
「だとすればやっぱり」
「だろうな。モンタージュでは同じだ」
「間違いないんじゃないですか?」
 金田はこう判断をしてきた。
「それだと。如何にもって感じで公園の前をウロウロしてますし」
「いや、まだだ」
 だが松本はここではまだ慎重であった。金田の言葉にもまだ動こうとはしない。
「いいな。決め付けるな」
「決め付けるな、ですか」
「若し違ったらどうする」
 そのうえで今度の言葉はこれであった。
「あいつが不審者じゃなかったらどうする?あれがただのファッションだったら」
「誤認逮捕ですか」
「そうだ。それでマスコミの餌食だ」
 世の中はそうなっている。警察でも何でもお役所の失敗を待っているのがマスコミだ。これは確かにお役所にも問題のある部分は多々あるがマスコミはとにかく他者、とりわけ自分達以外の権力者を攻撃する習性があるのだ。自分達は決して叩かない。そうした存在なのだ。
「気をつけろよ、そこは」
「ですね。マスコミだけは勘弁です」
 さしもの金田もマスコミと聞いて大人しくなった。
「何であの連中はあんなにうざいんですかね」
「それがマスコミだ」
 松本の言葉はそれだけだった。しかし一言でもやけに説得力があるものだった。
「わかったな。そういうことなんだよ」
「そうなんですか」
「とりあえず奴等の餌にはなるような真似はするな」
 餌とまで表現する。
「一生どころか親戚まで祟られるからな」
「そのまま悪霊ですね」
 それを聞いてこう思った。それをそ
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