第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十三 〜碧眼児〜
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、字を仲謀と申します。いつも、母や姉がお世話になっています」
ふむ、やはりそうか。
後の、呉皇帝。
……だが、今はまだ、睡蓮の次女に過ぎぬ。
無論、上に立つ者としての素養は感じられるが。
「拙者は姓は土方、名は歳三。此方こそ、造作をかける」
「いえ。只今母と姉が不在ですので、代理としてご挨拶に伺いました」
「わざわざ忝い。本来であれば、睡蓮殿に礼を述べねばならぬところだが、急ぎ交州に参らねばならぬ身。数日中にはお暇しようと存ずる」
「はい。……それから、この思春の不始末の事、母に成り代わりお詫び申し上げます」
思春と二人、頭を下げる孫権。
かなり、律儀な性格のようだ。
「もう済んだ事。後は、睡蓮殿にお任せする」
「……その事ですが。思春は母ではなく、私の直属なのです」
「……なるほど。では孫権殿にお任せ致す」
「はい。それから、私の事も以後、蓮華とお呼びいただいて構いません」
「蓮華様!」
孫権は、思春を手で制した。
「配下の不始末は、上司たる私の不始末でもあります。そうでなくては、私の気が済みません」
「……なるほど。貴殿なりの謝罪、と言う訳か」
「そうです。それに、聞けば母だけでなく、姉も妹も、貴公に真名を預けているとの事ではありませんか。私だけ許さない、というのもおかしな話です」
筋の通らぬ事は出来ぬ、か。
ならば、断る理由もなかろう。
「わかった、真名は預かろう。拙者、いや私には真名がない。好きに呼ぶが宜しかろう。……それから」
「まだ、何か?」
「いや、然したる事ではないが。雪蓮や小蓮と同じ、普段通りの口調で話すがいい」
「……しかし」
「礼を尽くすのは構わぬが、それで自らを押し殺す事はない。私は高貴な生まれでもないのだ、自然体の方が寧ろ望むところだ」
「……わかったわ。では、歳三と呼ぶわ」
何処か、安堵したような面持ちの蓮華であった。
その夜。
皆との再会と、新たに加わった山吹の歓迎を兼ねた宴を開いた。
軍師と文官に、稟、風、朱里、愛里、そして山吹。
武官は、愛紗、鈴々、星、彩、疾風。
……この時代に劉備がいるのかどうかはわからぬが、私が知る限り、それを上回る顔触れが揃っている。
そして、その全員と確かな信頼関係がある、そう断言して良い。
「山吹、なかなかいい飲みっぷりではないか」
「そういう星さんこそお強い。ささ、愛紗さんもどうぞ」
「ああ。今宵は久々に気持ちよく飲めそうだ。ひっく」
山吹も、どうやら無事に溶け込めているようだな。
……愛紗の飲む勢いが、いつもよりも早いような気はするが。
「ご主人様、これ、召し上がってみて下さい」
「ほう。天麩羅か」
朱里が差し出した皿には、野菜や魚の天麩羅が盛られていた。
この
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