第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十三 〜碧眼児〜
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て来た。
「土方様。一足先に上陸なさいますか?」
「しかし、もう指呼の距離ではないか」
「はっ。ですが、この楼船は大型なので、接舷にも刻を要します。艇を用意しますので、そちらに移乗していただければ」
「わかった。彩、愛里(徐庶)は残って下船の指揮を執れ。山吹(糜竺)は私と共に参れ」
皆、黙って頷いた。
そして、川岸から数艘の舟が近づいてくるのが見えた。
「あれか?」
「はい。艇と言いまして、普段は河川の警備などに用いています」
「なるほど」
漕ぎ手は二人のみだが、船足は速そうだ。
みるみるうちに距離が縮まっていく。
それに合わせて、楼船も速度を落とす。
そして、甲板から縄梯子が投げられ、準備が整ったようだ。
「揺れますので、お気を付けて」
「そうしよう。心遣い、感謝するぞ」
「……は」
移乗は滞りなく終わり、艇は岸へと向かう。
なるほど、見た目の通り、とても動きが軽快だ。
無論、漕ぎ手の力量もあるのだろうな。
「歳三さま。船着き場で、誰かが手を振っているようですね」
「……皆、揃っているようだな」
愛紗に星、鈴々、疾風(徐晃)。
当然、稟、風、朱里の姿も見える。
……漸く、皆が一堂に会す日が来たか。
そう思うと、感慨深いものがあるな。
その間にも、艇は岸へと近づいていく。
艫綱が結ばれ、一日ぶりに土を踏む事となった。
「歳三様、よくぞご無事で」
「道中、大変だったみたいですねー。ちょっとだけ、心配だったのですよ」
「皆、積もる話もあるだろうが、後にしようぞ。まずは、睡蓮(孫堅)に礼を述べねばならぬ」
「はっ。では主、私がお供仕ります」
「何を言うのだ、星。ご主人様は私が」
「いや、歳三殿、私がお供を」
「むー、お兄ちゃんは鈴々が守るのだ!」
……案の定、こうなったか。
「山吹さん、いつもこうですからあまり気にしない方がいいですよ」
「そ、そうなんだ……」
朱里の言葉に、苦笑するばかりの山吹だった。
宿舎に落ち着いた私は、皆から近況の報告を受けた。
「睡蓮が不在だと?」
「はい。山越が侵入したらしく、昨日慌ただしく出陣されました」
稟によると、雪蓮に祭、明命も同行したらしい。
うむ、皆を預けた事への礼を述べたかったのだが。
……だが、無為に留まる事は許されまいな。
「お兄さん。甘寧さんが、お話があるとお見えですよー」
「わかった。通してくれ」
思春は、一人の少女を連れていた。
桃色の髪、褐色の肌、そして意志の強そうな眼。
睡蓮や雪蓮、小蓮に似ている点で、予想はつくが。
「お目通りいただき、ありがとうございます」
「うむ」
件の少女が、私に一礼し、口を開いた。
「お初にお目にかかります。私は姓を孫、名を権
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