第一部
第二章 〜幽州戦記〜
参 〜初陣〜
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片っ端から斬り捨てるだけでよいのだ。
「土方様! 敵の大将らしき者を見つけました!」
「よし、そこに案内しろ。稟、風。ここを離れるな?」
「御意」
「お兄さん、わかったのですよー」
「おい、何してやがる! さっさと運び出せ!」
なるほど、身に纏う鎧は立派なものだ。
恐らくは、破った官軍の将から奪ったものだろう。
どうやら、宝物を集めているらしい……なんと醜悪な。
「部下を見捨て、己だけ逃亡を図るか?」
不意に目の前に現れた私に、賊の大将は驚愕している。
「だ、誰だてめぇは!」
「義勇軍の指揮官、土方歳三。貴様は今ここで死ぬのだ、宝などどうでも良かろう?」
「ぬかせ、この俺様に逆らうとは! 死ねい!」
剣を抜くと、大上段から斬りかかって来た。
最初に出会った雑魚よりは、多少はましか。
……だが、所詮は賊将だな。
懐から取り出した小石を、眉間めがけて投げつけた。
「あいたっ!」
見事に命中、抑えた額から、血が滴る。
その隙に国広を抜き、首筋に一閃。
賊将は、無念の形相で、その場に崩れ落ちた。
その首をかき切り、天幕を出る。
「賊ども、ようく聞けい! 貴様らが将はこの土方歳三が討ち取った! 全員、武器を捨てて降伏しろ!」
腹の底から声を出したから、あたりには響き渡っただろう。
あちこちで、剣や槍を投げ出す音が聞こえ始めた。
まずは、幸先良し……だな。
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