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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
参 〜初陣〜
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三様の名を知らしめるべきかと」
「稟の申す通りかと。主、天ならではの手立て、ございませぬか?」

 そうだな……。
 もう一度、双眼鏡で戦況を確認してみる。
 数は、恐らく賊軍の方が多い。
 とは言え、官軍は腐っても正規兵の集まり。
 即座に決着がつく事はなさそうだな。

「暫し、様子を見よう。この時点で参戦するのは得策ではない」
「御意!」
「皆の者! 指示があるまで待機だ、身体を休めておけ。ただし、火は使うな?」
「はっ!」



 日が暮れ、辺りが暗くなった。
 月が出ているので、多少の視界は効く。

「お兄ちゃん! 見て来たのだ」

 偵察に出ていた鈴々が、戻ってきた。

「ご苦労。どうだった?」
「黄巾党は、この辺に陣を構えているのだ」

 大まかに描いた地図上で、鈴々が示した場所。

「川のそばか。稟、風、このあたりの詳細な地形はわかるか?」
「はい。湿地帯になっていて、葦が茂っています」
「こっちには、小さな林がありますねー」

 湿地に林か……。

「ご主人様。何か思い浮かびましたか?」
「うむ。敵を混乱に陥れれば、この人数でも戦果は期待できるな」
「しかし、いくら有象無象の輩とは言え、そう簡単にいきますかな?」

 星の言葉に、皆が頷く。

「多少、賭ではあるが。こんな策はどうだ?」
「伺いましょう」

 私は、皆に作戦概要の説明を始めた。



 やがて、空が白み始めた。
 この時間であれば、賊軍は恐らく深い眠りに入っているだろう。

「よし、やれ」
「はっ!」

 私の合図で、兵が湿原に向け一斉に矢を放った。

「グワー、グワー」

 驚いた水鳥が、慌てて空に飛び出す。
 一羽だけではない、連鎖的に全ての鳥が飛び出した。

「お、おい! 何だありゃ!」

 賊軍の見張りだろう、騒ぐ声がした。

「て、敵だぁ! 官軍の夜襲だ!」

 そこに、別の声が響き渡る。

「や、夜襲だって?」
「ま、まずい! 全員たたき起こせ!」

 よし、賊軍が動き出したな。

「かかれ!」
「応っ!」

 全員で、一斉に矢を射かける。
 たかが百余名でも、まだ夜が明けきらない中ではかなりの本数に映るはず。

「ま、間に合わん!」
「に、逃げろっ!」

 訓練のされていない賊軍は、突発的な事項に対する対処が弱い。

「今だ。愛紗、鈴々、星!」
「ははっ!」
「応なのだ!」
「お任せあれ!」

 そこに、この三人が斬り込む。
 昼間ならともかく、この状態では誰が誰だか区別などつくまい。
 恐らくは混乱の末、同士討ちを始めるだろう。
 そして、こちらからは三人だけ。
 目についた奴を
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