暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
参 〜初陣〜
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する?」

 張世平は一瞬私を見つめて、それから大声で笑った。

「いやいや、やはり私の眼は確かでしたな。並の御方なら、ご用立ての時点で眼の色を変えますが。よもや、そこにお気づきになるとは」
「当然であろう。商人は利で動くもの、担保の事は当然、念頭にある筈だからな」
「御遣い様は、商人の経験がおありで?」
「多少な。薬など、商っていた事もある」

 すると、愛紗が私を見て、

「では、ご主人様からいただいたあの薬が?」
「そうだ。打ち身がだいぶ楽になったであろう?」
「は、はい」

 顔を赤くしながら、頷く。

「薬、でございますか。どのような薬で?」
「うむ、私の実家秘伝の散薬だ。今はあまり残っておらぬが」
「そんな貴重な物を……。ご主人様、ありがとうございます」
「気にするな」

 ……愛紗以外の者達が、興味津々、といった風情だな。
 何やら、羨望の眼差しが混じっている気もするが。

「土方様。その薬、作れませぬかな?」
「手持ちは稀少ではあるが、材料さえ揃えられれば、製法は覚えておる。だが、何故かな?」
「はい。どうやら、大層な効き目がある様子。先ほどの担保のお話、それで代えさせていただいても結構でございますよ」
「何と。だが、所詮は薬、単価では釣り合わぬのではないか?」
「いえいえ。効き目があれば、商売になりますからな。そして、それは天の薬なのでございましょう?」
「そうだ。私の実家秘伝、製法を知る者はおるまい」
「では、その材料と製法、それでお取引願えますかな? ちなみに、名前は何と?」
「名か。『石田散薬』と言う」

 は、何度も頷いてから、

「わかりました。名前もそのまま、いただいてよろしゅうございますか? 天の薬、という売り文句も」
「構わん。お主がそれでよい、と申すならな」
「はい、ありがとうございます。では、証文を認めます故」



 十日後。
 張世平は約定通り、金と馬、兵糧まで整えてくれた。

「何から何まで、かたじけない」
「いえいえ、これは立派な商い。お気になさいますな」

 慇懃に、頭を下げた。
 件の若者を初め、一帯の村々から有志の若者が集った結果それなりの人数となっていた。

「結局、義勇軍からの一歩となるか」
「いえ、形はどうであろうと、兵力を持つ事に意味があります。それに、張世平殿から紹介状もいただきました」
「そうだな」

 張世平の援助はもちろんだが、大きかったのは紹介状だ。
 とにかく、今はまだ漢王朝が存命中。
 いくら衰退しているとはいえ、その権威はまだ生きている。
 ならば、その権威を生かさなければ、世に出る事は適うまい。

「それでお兄ちゃん。最初はどうするのだ?」

 鈴々は、私の事
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