第一部
第二章 〜幽州戦記〜
参 〜初陣〜
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今はまだ無力だが、それでも出来る事はある筈。そう思っている」
愛紗の言葉に若者は頷くと、
「実は、私の親戚が商売を営んでおります。事情を話し、助力を頼んでみようかと思うのですが」
「ほう」
確か劉備も当初、このような話があった筈だな。
「もしや、その商人と申す者だが。張世平、と言う名ではないか?」
「な、何故ご存じなのですか?」
どうやら、正解らしい。
若者だけでなく、皆が驚いている。
「歳三様。ご存じだったのですか?」
「まぁ、そんなところだ稟。だが、私も確証があった訳ではないが」
「あの……。貴方様は、一体……」
不安げに私を見る若者に、風が答えた。
「このお兄さんは、天の御遣いさんなのですよ」
「て、天の御遣い様ですと?」
何とも胡散臭い存在になってしまうぞ、それでは。
だが、当の本人は気にする素振りも見せない。
「そうだ。それ故、我らはこの御方を主と仰ぐ事に決めたのだ。この大陸に、真の平和をもたらすためにな」
星まで、大真面目に付け加える。
だが、若者はひどく感激した様子で、私に頭を下げた。
「そ、そうでしたか! ならば是非とも、張世平にお目通りを! きっと、御遣い様のお役に立てるか」
「ならば、頼むとしよう」
資金が必要なのは事実。
背に腹は代えられぬ、というところか。
数日後。
若者の手引きにより、張世平との面会が実現。
「貴方様が、天の御遣い様で?」
「そうだ。姓を土方、名を歳三と申す」
「これはこれは。手前は張世平。しがない商人でございます」
そして、張世平は私の周りを見渡して、
「御遣い様ご自身も、ただ者ではございませんが、他の方々も皆、一角の人物のご様子。官軍にも、これだけの顔ぶれとなるとなかなか」
「ほう。張世平殿は、官軍にも顔が通じるのですか?」
感心したように、稟が言う。
「少しばかり、お付き合いさせていただいておりましてな。并州太守の董卓様、幽州牧の公孫賛様などに出入りさせていただいております」
「皆、なかなかの大物ばかりではないか。どうだ。風?」
「そうですねー。お兄さんの言う通り、どちらも官軍では名を馳せている方ばかりかと」
「それで、助力を願いたいのだが。どうだ?」
愛紗が尋ねると、張世平は鷹揚に頷いて、
「はい。この者から最初に話を聞かされた時は半信半疑でしたが。先ほど挙げた名前を聞かれても動じる事も、媚びるご様子もない。そして、将の方々も優秀。……つまり、前途有望、と見ましたな」
「では?」
「ええ、資金はご用立て致しましょう。それから、馬と武器、食糧も可能な限り」
破格の申し出だな。
「聞くが、担保はどう
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