学園祭のライオンハート
眠りの病
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「バアル家はサイラオーグだけ渡さないと当主が言った事で、更に怒りを覚えたよ。いくら何でも酷な話だが、家の恥を外に出す訳にはいかないとの提案を飲める訳がないからな。このヒトを保護しなかったら、幼いサイラオーグは幽閉されて一人蔑まれて生きていく事だったからな」
「その通りでございます。ミスラ様は故郷の助力を断り、サイラオーグ様と私達一部の者を連れてバアル領の辺境へと移り住む事になったのです。そこならバアル家の目の届く位置であり、外部にサイラオーグ様を晒す事もありませんから」
そこから聞いた話だと、バアル家はバアル領の奥地に母子が移り住む事を許可した。家の援助無しだったので、田舎で暮らし始めたがそこでも苦労が絶えなかった。上流階級育ちだった為、助力無しでの田舎暮らしは辛い時もあったがサイラオーグを立派に育て上げた。時に厳しく時に優しく教育したが、本来魔力が無いに等しい悪魔は良い待遇を受ける事が出来ない。
田舎に移り住んでからも、サイラオーグは差別の対象となり同世代の下級・中級悪魔の子供達よりも魔力が劣っていたからいじめを受けていた。それでもこのヒトは泣いて帰って来るサイラオーグに強く言い聞かせた事で今に至るんだよな。魔力無しでも己の腕力のみで倒す体術のエキスパートとなったからな。
『サイラオーグ、あなたは魔力が無くとも立派な体があります。足りないと感じるのであれば、足りないモノを何かで補えなさい!腕力・知力・俊足、これを補えばあなたは誰が言われなくともバアル家の子です。例え魔力がなかろうと、滅びの力がなかろうと諦めなければいつか必ず勝てるから』
と母から教わったサイラオーグだったが、このヒトは裏では何度も謝り続けた。滅びの力を持たずに産ませた事で、サイラオーグが眠る横で何度も泣き続けていた。それを察したのか、ある日から泣くのを止めてから真正面に立ち向かう事にした。自分をバカにした者に、何度も倒れ続けながらも立ち上がり続けた結果とある夢を掲げた事で今のサイラオーグとも言えるかもしれん。
『実力があればどんな身の上の悪魔でも夢を叶える事の出来る冥界を作りたい』
当時は実力社会だった悪魔業界で、上流階級とそれ以外で世界が違う。力を持っていたとしても出自によって、望める生き方を実現出来た者は少ない。古い家柄を持つ上級悪魔からの下級・中級悪魔への差別は、未だに残っているが俺らの未来にはそれを無くす動きを見せている。
この俺という存在があってからの冥界は変わりつつもあるが、古き仕来りを持つ者にとっては邪魔でしかない。サイラオーグが中級悪魔とまともに勝負が出来る頃、サイラオーグの母親に異変が起こった事でこのヒトは現在横になっている。
「悪魔がかかる病の一つで、症例は少ないけれどその病気にかかれば深い眠りになり目を覚まさな
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