十七話:覚悟と理想
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そんな姿にどこか既視感を抱いた切嗣だったがすぐにそれが何かを理解する。
―――この子は自分に似てしまったのだと。
「はやて、少し……昔話をしようか」
「なんや、急に改まって」
娘の姿に少しだけかつての自分を思い出した切嗣は昔の話を切り出す。
それは、もはやどうすればいいのか分からなくなってしまった自分を奮い立たせるためでもあり。もしかすると誰かに背中を押して欲しかったのかもしれない。
「子供の頃、僕は正義の味方になりたかった」
「なんや、それ。なんで過去形なんや? 諦めたんか」
不服そうに唇を尖らせるはやてに苦笑しながら思い出す。
誰もが幸福な世界を探した。誰も傷つけずに済む方法を探した。
だが、そんなものはこの世のどこにも存在しなかった。
見つかったのは優しい正義などこの世のどこにも存在しないという現実のみ。
手に入れたのは絶望への片道切符のみ。
失った者は手に入れたものとは比べるまでもない程に大切な者達。
「うん。残念ながらね。ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ」
「そうなん?」
「うん。そうなんだよ。でも、やっぱり……今でもヒーローには憧れるかな」
子どもの頃の理想は今もなおこの身に宿り続けている。
だが、しかし。かつてのような輝きを放っているとは限らない。
薄汚れて、砕けて、ゴミのように打ち捨てられている。
だというのに、かつて夢見た光は瞼に焼き付いて離れてくれない。
いつまでも子供の夢を捨てきれない。そんな愚かな自分に笑いが零れる。
「なぁ、おとん」
「なんだい、はやて?」
「大丈夫やよ。おとんは―――正義の味方になれるよ」
予想だにしなかった言葉に、電流が体を駆け巡る。
今、この子は何と言った。正義の味方になれる。自分が。正義を名乗る資格すらない自分が。
夢を叶えられると、言ってくれたのだ。
「ほら、夢は諦めなければ叶うって言うやん」
「それは、そうだけどね……」
「まあ、私には正義なんて難しものは分からんから、おとんが正義だと思うことをやったらええんやない」
はやての言葉に深く考え込む切嗣。
自身が正義だと思う事をやればいい。何とも単純で、難しいことだ。
しかし、それ故に真理をついていると言えるかもしれない。
悩む必要などなく、今までのように自身の信じる正義を行えばいい。
それが答えなのだと分かりながらも不安そうに尋ねる。
「父さんにできるかな?」
「何言っとるん。できるよ、なんと言っても―――私のおとんなんやから」
満面の笑みで言われた言葉。その言葉は切嗣の目に燃え盛る炎をたぎらせる。
どんな悲惨な結末が待っていようとも、希望のない未来であっ
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