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東方乖離譚 ─『The infinity Eden』─
episode2:その異変は唐突に
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さんは??」

「女房はあの奥で座ってる……今回のが相当堪えたらしくてな……」

 見れば人混みの中に肩を抱えて震える人影が見える。彼女は妖怪を相当恐れていたようで、軽いパニックに陥っているのだろう。兎も角、無事で良かったと心から思う。

「今、人間の味方の魔法使いが妖怪の進行を食い止めてます。今の内に、皆を避難させましょう」

「あ、ああ。分かった。オイ!逃げるぞテメェら!立て!俺が先導する!」

 人々に向けて店主が怒鳴ると、それに触発されて人々がぼつりぽつりと立ち上がる。未だ恐怖に震えて蹲る者も居れば、彼らに手を差し伸べて立ち上がらせる者もいる。中には、店主に駆け寄って彼を補助する者も居た。

 ──よし、コレなら行ける!


 ズッガァァァアァァァン!


 そんな期待も虚しく、古い建物を突き破って、獣型の妖怪が広場に躍り出て来た。

 ──フラグでしたねわかりたくありません

「よ、妖怪??」

「なんで此処に!?食い止めてるんじゃ無かったのか??」

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ──やっぱそうなるよね!

「店主さん!私が少しでも時間を稼ぎます!皆を逃して下さい!」

「ヒメノちゃん??何言ってんだ!無茶なんてもんじゃ無いぞ!」

「退魔の道具は多めに貰ってます!早く!」

 店主を促し、腰に携えておいた退魔の短剣と札を取り出す。今まさに人々へ迫ろうとする妖怪の前に躍り出て、妖怪を隔離する簡易結界を張る札を、妖怪の足元の大地に叩きつけた。
 現れた光の壁は妖怪に対して垂直に広がり、その突進を妨げる。

「ガァッ!?」

 妖怪は弾かれるように後退し、憎らしそうに此方を睨む。今にも飛び掛らんとしそうな眼で、強烈な殺気を放ってくる。
 結界が幾らでも続くのなら此処で自分も逃げる所なのだが、生憎と結界の持続性は乏しい。自分が離れては、すぐに追い付かれてしまうのだ。結界が切れる寸前で、再び同種の結界を張ろうと──

「っ!」

 半ば直感に任せて、幽香に打ち砕かれ、ほぼ刀身の無くなった破魔の剣を引き抜く。
 同時に剣を持つ手に重い衝撃が加わり、耐え切れる筈もなく吹き飛ばされた。
 戦い慣れもしていない私が受け身など取れる筈もなく、無防備に地面に転がり込む。

「何……で……!」

「ルグァァアッ!!」

 その爪は、結界を貫通していた。
 ただの妖怪では傷一つ付けられない結界が、そのただの妖怪に破られた。
 妖怪が元々強力な妖怪であった……という事は無いだろう。一応藍との訓練で妖怪の強弱くらいの区別は付くようになっているが、この妖怪は明らかに1面中ボスにも劣る程度の強さしかない。しかし現実に結界は破られている。

 明らかに普通では無い
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