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東方乖離譚 ─『The infinity Eden』─
episode2:その異変は唐突に
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「はッ──!はっ──!っ……はぁっ!」

 走る。走る走る走る。息切れすら無視して、構わず走り続ける。
 無人の森をただひたすらに駆け、迫り来る『死』に抗い続けた。
 不意に、背後が光る。
 閃光が走り、一筋の光線がヒメノへと迫った。

「──らぁっ!」

 咄嗟に、腰の退魔の剣を叩き付ける。
 博麗の巫女によって破魔の特性を付与されたその剣は、閃光を防ぎ切ったものの、たったの一撃で折れてしまう。
 現状、これより強い破魔の道具をヒメノは持ち合わせていない。

「ワーオ……」

 キュオンッ!

「わぶっ??」

 驚いている暇もない。再び飛来する弾幕を、直感だけで躱す。今ほどあの修行が有意義だったと感じた事があったろうか。
 これでもまだマシな方なのだ。本来なら無数の弾幕の雨が降り注ぎ、躱す暇もなく即死していたって何らおかしくない。否、そうでなければおかしいぐらいなのだ。

 それでも今こうして生き永らえているのは、ひとえに上空で出来る限り弾幕を弾いてくれている文のお陰であって──

 チュンッ!

「うばっ??」

 ──弾幕をレーザータイプ限定にしてくれている、幽香の手加減のお陰でもあるのだ。

 通常の弾なら、今ので顔が半分は消し飛んでいただろう。しかしレーザータイプならば射線が細く、僅かに掠る程度で済む。
 勿論私はルナシューターでもないので、グレイズうまうまとか言ってる化け物達みたいに嬉しくない。

 兎に角立ち上がる。足を動かし、一秒でも早く外に出る為に疾走する。時折降ってくるレーザーをギリギリで躱し、その着弾地点が深く抉れている様に冷や汗を掻きつつ、更に走る。

 よし、森が途切れている。曇っているだけにしては随分と外が暗いが、森から出ればこちらのものだ。森の中では草木を掻き分けて空に抜けるには時間が掛かり、幽香に追いつかれてしまう。文の風で森を抜けようとすれば、その隙に幽香は文を殺すだろう。
 が、森から出れば問題の草木は無い。文のスピードなら確実に逃げ切れる。

 あと五歩。四歩。三歩。二歩。一歩──

 ──出たっ!

「文──って、ふわっ??」

 叫んだ時には、既に体は宙を舞っていた。
 凄まじい速度で森が遠ざかり、幽香の影も米粒程に小さくなっていく。
 ──と、不意に頭上から声が聞こえた。それは当然、ヒメノを抱えて飛翔する文のモノだった。

「──ヒメノ」

「え?」

「アレは、何?」

 文の示す方角を視線で追う。っていうか暗すぎませんかい?今昼だよね?人里を出たのが正午過ぎだったから今はお天道様は真上にある筈なんだけど──

 視線を上げたヒメノが見たモノは、ヒメノにとっては久々に見る──しかし、幻想郷にとっては概
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