2部分:第二章
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かわからないのに」
「今のところ皆無事だけれど」
「だからそういう妖怪じゃないから」
そんな皆にも相変わらずの調子で返す博士だった。
「大丈夫なんだよ」
「そこまで言うのならね」
「まあそれでも」
「一人で行くよりは」
こう言って皆足を踏み出した。
「皆でね」
「行こう」
「皆一緒に来てくれるんだ」
博士は自分の後ろについて来てくれる皆の姿を見て微笑むのだった。
「有り難うね」
「乗りかかった船よ」
「そうそう」
皆何故かここではわざと澄ましたような顔になって言うのだった。
「心配とかそういうのじゃないからね」
「そこのところは勘違いしないで欲しいな」
「わかったよ。それじゃあ」
「ええ」
「皆でね。行きましょう」
微笑んでいる博士に対してまた告げる。こうして博士は皆と一緒に鳥居の前まで来る。鳥居は近くで見てもやはり不気味なものがあった。薄暗い蛍光灯の灯りがそれをさらに増したものにさせている。そして博士がその鳥居の前に立つと。いきなりその後ろから出て来たのだった。
「げっ」
「やっぱり出て来た」
皆その妖怪を見て真っ青になる。見れば確かに江戸時代のお嫁さんの服を着て角隠しまでしている。目と鼻がなく眉も剃っている。そしてその歯はというと。
「相変わらず黒いし」
「気持ち悪いなあ」
そうなのだった。やはり歯が黒いのだ。皆それを見て顔を顰めさせずにはいられなかった。
だが博士だけは落ち着いた顔だった。そしてその顔で静かに妖怪に対して言うのだった。
「お嫁さんにしてあげるよ」
「お嫁さんに?」
「うん、そうだよ」
微笑んでその妖怪の問いに答えるのだった。
「だから。安心してね」
「そう。それじゃあ」
妖怪は彼の言葉を聞くと口元を綻ばさせた。そのまますうっと姿を消してしまったのだった。
「消えた!?」
「消えたわよね」
「ええ、間違いなく」
「完全に消えたね」
皆妖怪が完全に消えてしまったのを見て口々に言い合う。そのことがとても信じられないといった様子だった。
「どういうこと?これって」
「さあ」
皆にはそれがどうしてなのかさっぱりわからなかった。
「お嫁さんにしてあげるって言われただけなのに」
「どうして消えたの!?」
「しかもあんなに落ち着いた顔で」
「あれはね。お歯黒べったりっていうんだよ」
博士がその驚くばかりの皆に対して言ってきた。
「あの妖怪はね。そういうんだ」
「お歯黒べったり!?」
「それがあの妖怪の名前なの」
「そうなんだ。お嫁さんに行けないで死んでからその恨みと悲しみでね」
「妖怪になったの」
「そういうこと。だからあの格好なんだ」
こう皆に説明するのだった。
「昔のお嫁さんの格好でね」
「そうだったんだ」
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