第3章 黄昏のノクターン 2022/12
24話 船匠の願い
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自賛する気持ちとで、凄まじいまでの自信を表情に湛えていた。
とはいえ、今は目的地へ向かうにも船はあって困るものではない。全員がゴンドラに乗り込むと、緩やかに漕ぎ出して淀みなく船首を大通りへと向ける。
「………リン君、ちょっといいかしら?」
船が離岸して間もなく、クーネが呼びかけてくるのを聞き、顔だけそちらに向ける。
「さっきのヌシ熊についてなんだけど、かなり強いって言ってたわよね? どのくらいなの?」
「ああ、それについての説明もした方が良いか………というか、本気でやるのか?」
「もちろん! 良質な船が手に入るなら望むところよ!」
「そうか」
クーネの問いを受け、ヌシ熊に関する情報を精査することおよそ二秒。確実に言えることだけをピックアップする。
「冗談抜きでさっき言った通り、馬鹿でかい熊だな。俺が記憶している攻撃方法は突進と前足の薙ぎ払いだけ。突進はしばらく硬直があるってくらいだな」
「それだけ? ボク、もうちょっと強そうなんだと思ってたけど」
続いて、ヌシ熊を完全に侮るようなレイの発言が場の緊張を和らげたが、こいつらはヌシ熊を相手取るつもりなのだろうか。しかし、倒すつもりであれば一筋縄にはいかないだろう。認識がやや甘いような気がする。それを引き締める意味で、俺は言葉を続ける。
「俺の認識している攻撃パターンが少ないのは、俺がヌシ熊から逃げたからだ。真っ向から挑むにはあまりに分が悪過ぎた。何たって当時のベータテストで六人PTが簡単に蹴散らされた相手だぞ。ソロで挑むなんて馬鹿な真似はしないし、あれは俺からしてみれば興味のない相手だったしな」
「え、じゃあ………やっぱり強いの?」
「いや、当時の第四層における最前線のプレイヤーの平均レベルは今ほど高くない。ハードル自体は下がっているだろうが、単調な物理攻撃だけならパターンを覚えれば十分に回避やガードは可能だったはずだ。それでも、PTが何度も全滅したことを考えれば、何かしら要因があると考えるべきだろう………まあ、俺は知らないんだけど」
そう、単調な物理攻撃だけでなかったからこそ、かつて数多のプレイヤーはヌシ熊に敗北を喫した。むしろ攻略法の一つも広まっていないくらいだし、倒されているのかさえ怪しい。余所のPTが俺の進行方向で全滅し、その有り余るヘイトがそっくり俺に向きさえしなければ好んで挑みなどしない。その時の俺でさえ、前足の薙ぎ払いを受け流し、突進を大木にぶち当てて硬直した隙に一気に逃走した程度。立ち枯れた木の乱立する、林と呼ぶにもお粗末だったベータ時代の森で垣間見れた仮想敵の実力はその程度でしかない。
ヒヨリの熱意を実現させようと、クーネ達が俺の情報量の少なさを愚痴りつつあれやこれやと考察や推測を立ててい
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