第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十二 〜弓腰姫〜
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。ただこの娘、ちょっと思い込みが激しくてね」
雪蓮の言う通りであろうが、それで事を収めるのは筋が通るまい。
「気にするな、と申したいところではあるが。この事、睡蓮には伝えさせて貰う」
「……は。構いません」
「あちゃー。歳三、やっぱり怒ってる?」
「勘違いするな、雪蓮。甘寧は主筋の危機と思い、動いた。そこは咎めるべきではない。だが甘寧、仮にこのままで済ましたとして、お前の気は済むか?」
「……いえ。もしお手討ちにあっても、文句を言える状況ではありませんから」
甘寧は今一度、頭を下げてから、
「咎は改めて睡蓮様よりお受けします。……それとは別に、ご無礼へのせめてものお詫びです。以後、思春とお呼び下さい」
「ふむ、真名か。良いのだな?」
「は。義の土方様になら、喜んでお預け致します」
「わかった。私には真名がない、好きなように呼ぶと良い」
「ありがとうございます」
「良かったね、思春」
シャオを見ると、甘寧は咳払いをし、立ち上がった。
「さて、シャオ様。……私が此処にいるか、おわかりでしょうか?」
「……え? さ、さぁ。何でかなぁ?」
「なら、小蓮。わたしまで、此処にやって来た理由は何だと思うの?」
「わかんない。じゃ、私は先に……」
「帰れると思う?」
「あ、あははは……」
まさに、四面楚歌だな。
シャオは私を見るが……理由は聞かずとも、シャオを擁護するべき理由は見当たるまい。
「いつの間にか私の船に潜り込まれたようですね。手の者に見つからずに、という点は感服しましたが」
「呉も大騒ぎよ。それで、もしかしたら此処じゃないかって。母様、カンカンだったわよ?」
「い、いーじゃない! シャオ、子供じゃないもん!」
「……子供でないなら、我らに無用な心配をかけないでいただきたい」
「そうよ。さて、話はじっくりと聞かせて貰うわ。思春、行きましょ」
「はっ。では、失礼致します」
そして、シャオは両腕を二人に掴まれた。
「歳三! 見てないで助けてってば!」
「……自業自得だ。観念せよ」
「ひっどーい!」
バタバタと暴れるシャオだが、雪蓮と思春相手では分が悪過ぎよう。
「あ、そうそう。途中で諸葛亮に会ったけど、歳三の迎えなら思春が任されたから」
「ほう。では、朱里はどうしたのだ?」
「そのまま、呉に向かったわよ。わたしも急いでいたしね」
「そうか。では思春、改めて宜しく頼む」
「はっ! では明朝、お迎えに上がります」
そして、三人は部屋を出て行った。
「ふう。何とも、賑やかな事でしたね」
溜息混じりに言う山吹。
「そうだな。……ところで殿、よもや、とは存じますが」
「どうしたのだ、彩?」
「尚香殿の事です。……あの姫君の言葉、真に違うのですな?」
ずい、と彩は身を
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