第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十二 〜弓腰姫〜
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を、孫家に入れたいんだって。なら、シャオにだってその資格はあるんじゃない?」
「睡蓮の理屈でいけば、な。だが、私はそのような約定をした覚えはない」
「う〜ん、たぶん歳三がそう思っていたとしても、諦めるようなお母さんじゃないよ?」
「あ、あの……。歳三さま、一体何の話なのですか?」
困惑する山吹。
いや、寧ろ混乱している、と言うべきか。
「歳三さん。糧秣の手配、終わりました」
「殿、私の方も全て滞りなく……む、何ですかこの童子は?」
そこに、愛里と彩(張コウ)が戻ってきた。
「だーかーらー、シャオは子供じゃないの! 何よ、童子って!」
「童子は童子であろうが。殿から離れよ」
「嫌よ。シャオは孫尚香。それでもまだそんな態度を取るの?」
だが、愛里と彩は全く動じる様子もない。
「それはおかしいですよ。だって此処、徐州ですし」
「第一、貴様が孫尚香殿という証拠が何処にある?」
「ぶー! 何とか言ってやってよ、歳三!」
やれやれ、手のかかる姫君だ。
「愛里、彩。この者の申す事は真だ」
「そーよ。シャオは歳三の妻になる身よ?」
「え?」
「はぁ?」
山吹と違い、この二人は全く驚く様子もない。
それどころか、彩は盛大に溜息をつく。
「……貴殿が仮に、本物の孫尚香殿であったとして、だ」
「仮も何も、本物よ!」
「それで、どうして殿との奥方になる、と宣言出来るのだ? 第一、殿は承諾なされたのか?」
「そ、それは……。歳三、はっきり言いなさいよ!」
……頭痛がして来た。
「その前に、シャオ。お前がこの街にいる理由の説明が終わっておらぬぞ」
「だから、歳三に会いに来たんだって言ったじゃない」
「そうではない。此処が揚州ならばいざ知らず、仮にも揚州牧の一族であるお前が、そう気軽に他州を訪れるのは好ましいとも思えぬ、という事だ」
「……何よ。歳三は、シャオが会いに来て嬉しくない、って言うの?」
まるで話が噛み合わぬな。
彩とシャオは睨み合ったまま、両者とも視線を逸らそうともせぬ。
「待て!」
「ええい、どけ!」
「ぐはっ!」
不意に、階下が騒がしくなった。
「何事か?」
「見て来ます」
愛里が扉を開けた瞬間。
部屋に、何者かが飛び込んできた。
「小蓮様!」
「あ、思春だ。やっほ〜」
どうやら、睡蓮麾下の者らしいな。
鋭い目つきをした、身のこなしの軽そうな少女。
我々から庇うかのように、シャオの前に立つ。
「小蓮様、お怪我はございませんか?」
「う、うん……」
「……さて、貴様だな? 小蓮様を拐かしたのは」
そう言い放ち、少女は私を睨み付ける。
「思春、違うってば」
「小蓮様は黙っていて下さい。……貴様が、小蓮様と共に居るところを、
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