第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十二 〜弓腰姫〜
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強そうだが、腕は……然したる事もないと見た。
「孫家の姫君か」
「そうよ。さ、約束通り質問に答えなさい」
何とも、くだけた姫君だな。
尤も、睡蓮や雪蓮があの調子だ、こう馴れ馴れしくてもやむを得ぬ、か。
「……そうだ。私が土方だ」
「なーんだ。勿体ぶっちゃってさ」
「それで、私に何用か?」
「用があるから来たに決まってるじゃない。それはね」
「歳三さま、お待たせしました。宿舎の手配が……あれ?」
そこに、山吹が戻ってきた。
「どうかしたんですか、この子? 迷子とか?」
「むー、シャオは子供じゃないもん!」
「どういう事でしょうか?」
首を傾げる山吹。
「とりあえず、宿に案内せよ。貴殿の用件も、そこで伺おう」
山吹が煎れた茶を喫しながら、宿にて寛ぐ。
「孫堅様のご息女でしたか。失礼致しました」
「いいのよ、わかれば」
素直に無礼を詫びた山吹に対し、孫尚香は咎め立てしようともしなかった。
まだ幼少ではあっても、人の上に立つ者としての素養は備えているらしい。
「しかし、尚香様。何故、この地に? 孫家の影響は、この街までは及んでいない筈ですが」
「知ってるわ。当然、土方に会いに来たに決まってるじゃない」
そう言って、孫尚香はにこやかに笑う。
「ね。あなた、真名は?」
「……生憎と、真名というものがない国の出でな」
「ふ〜ん。でも、お母さんや雪蓮お姉ちゃんから、真名は預かっているんでしょ?」
「ああ」
「なら、シャオも真名で呼んでいいよ。真名は小蓮だけど、シャオって呼んでね♪」
唐突過ぎるな、流石に。
山吹など、呆気に取られているのだが。
「尚香殿」
「だから、シャオだって」
「……真名がどういう者か、わかった上での事か?」
「とーぜんじゃない」
そう言いながら、立ち上がる。
そのまま、私の腕にしがみついた。
「……何の真似か?」
「だって、未来の旦那様だもん」
「だ、旦那様?」
思わず、椅子からずり落ちる山吹。
「歳三さま? 一体、どういう事ですか!」
「……私が聞きたいぐらいだ。尚香殿」
「シャオ」
「……どうしても、真名を預ける気か?」
「そうよ。でなきゃ、返事しない」
梃子でも動かぬ、という顔だな。
……子供相手に、意地を張るのも大人げないか。
「わかった。ではシャオ」
「うん♪」
一転して、無邪気な笑顔を見せる。
「私自身、初耳なのだが」
「そうだよ。だって、まだ誰にも言ってないし」
「そ、それは許嫁とは言いませんよ!」
うむ、私もそう思うぞ、山吹。
「えー? だって歳三の事、お母さんは雪蓮お姉ちゃんの旦那になる人だって言ってたよ?」
……睡蓮、お前は何処まで公言するつもりなのだ?
「歳三みたいな優秀な男の血
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