相似で逆接な在り方
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まあいいかと切り替えて聞いている振りをしながら書簡を確認しようとして……疑問が浮かぶ。
「――――ですからあの白蓮殿だって無理ばかりして精神を病んだりしたことがあったのですからあなただって……」
「そういえば愛紗ちゃんはどうして執務室に来たの?」
説教じみてきた彼女の話の途中、なんのことやあらんと桃香が挟み込む。
ピタリと口を閉じた愛紗の眉が怒りを僅かに伝えていた。
「……私の話を聞いてませんでしたね?」
「えへへ」
「あなたという人は……はぁ……」
大きなため息。確かに此処で長々と話すのもよろしくない。今回の優先順位はそれでは無い、と。
「昨日、星が不思議なことを言っていたので少々お尋ねに参った次第です」
「不思議なこと? 私に関係してるの?」
「ええ、桃香様に聞け、と言っていたので」
何かあったっけー、と首を捻った桃香は顎に指を当て、愛紗は難しい顔のままで続きを綴った。
「……“私達劉備軍に大変なことが起きる”、星はそう言っていましたが心当たりはありますか? 私に覚悟しておけ、気をしっかりと持たなければ喰われるとも言ってました」
大変なこと、と反芻した桃香は続きを聞いて一寸の内に固まった。
星が愛紗に言ったというのが問題であり、その忠告を行ったという事は既に……
――星さんにもまだ伝えてないはずなのに……じゃあ、もう会ったってこと?
偶然か、はたまた必然か。
一番仲のいい者と出会ってしまう当たり何かの計らいを勘ぐらずには居られない。
そういえば、と思い出した桃香は先ほどまで確かめていた報告書をバサバサとめくり上げて行った。
「と、桃香様? 何をしているので――」
「ちょっと待ってて」
表情が真剣そのもので、さすがの愛紗とて彼女を乱すわけには行かず押し黙った。
幾枚めくった辺りに、桃香の目が見開かれる。
「こ……これだ」
街であった事案に対する警備隊からの報告書。警備隊の管理は愛紗達のような将に委任されているので普通は桃香の所まで回ってくることはない。未然に防げたという点でも優先度が低いはず。
しかしながら書いてあった報告は間違いなく桃香まで回すべきモノであった。
横から覗いた愛紗は感嘆の吐息を漏らす。
警備の兵が称賛を以って報告を上げる程のその内容は……
「人質を取った暴漢に対して殺すことなく人質を救出。しかも男とは……私の所の部隊長でも難しいでしょうね。やはり世界は広いということでしょうか。ぜひ我らの軍に来て欲しいモノです」
武力の高い男の前例を知っているから、愛紗は素直に称賛を口に出す。
桃香も同じく、人材の確保の為に捜索の願いを出して監査済みの判を押した。
震える唇と掌。じわりと噴き
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