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乱世の確率事象改変
相似で逆接な在り方
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かしと望んで介入を避けていた。

 始まりが違うから彼女は秋斗のようにはなれないし、ならない。

 非力だからこそ命の尊さを知り、大切に扱うことで人を惹きつけてきた彼女と、
 力を得たからこそ命の尊さを知り、散る華を咲かせと命じ続けて想いを引き連れて来た彼。

 相似でありながら逆接のような二人の違い。決定的な違いがあったから秋斗と桃香は相容れない。

 桃香だけは彼の想いを理解出来ない。
 今にどんな想いがあろうとも、誰であれ生きる歓びを与えたいから。

 秋斗は彼女の想いを理解出来ても認めることは決してない。
 生きる歓びがどれだけ素晴らしかろうと、死する者の想いを掬わずに居られないから。

 誰も知らないことで、誰も気付かない違い。
 当然、今の桃香であれども気付くことは無く……例え徐晃隊に対してであろうと、彼女の望みを語るだろう。

 閑話休題……あだしごとはさておいて、彼女はやはり彼が怖ろしい。
 敵として戦うことに悲哀はあるが、恐怖も同じほどある。

――どうして私は……あの交渉の時からずっと、あの人と戦うしかないって思うんだろう。

 恐ろしいなら戦わなければいいのに、通常の人間ならばそう考える。
 どれだけの人間が死ぬか分からない。友達同士を争わせることにも忌避がある。
 同じ夢を見れる男だと知っているから、桃香自身が描く未来を肯定していた男だったから、本来なら戦わなくてもよいはずだ。

 唸っても悩んでもいつも答えは出ずに、“戦わなければならない”とだけ思う。

 しばし考え込んでいた桃香であったが、不意に扉が“のっく”されて意識がそちらに傾いた。

「はーい」
「失礼します、桃香様」
「お疲れさまー、愛紗ちゃん♪」
「ええ、桃香様も」
「んー、私はあんまり疲れてないよ?」

 のんびりと言うと愛紗が沈黙で返した。悩ましげに眉を顰めて、漸く出した声はため息と共に。

「……その机の上に置かれている承認済みの書簡の山を見ては信じられませんが」
「あ、あはは。昨日終わらせた分だよ。朝から劉璋さんのとこ行ってたし」
「また夜更かしをしたのではないでしょうね?」
「最近はちゃんと寝てるもん。えっと、夜半過ぎには」
「ではもっと遅くまで起きているのですね」
「う……あー、愛紗ちゃんには嘘つけないなぁ」
「バレバレですよ。まったく……私や星に投げてもいいでしょうに。部下は使ってこそなのですから。白蓮殿からも教えられたでしょう? 白蓮殿や朱里が居ないからといって自分だけですることはありません。文官達に割り振り、少しくらい“残業”させたって――――」

 こんこんと語り始めた愛紗に対して、桃香はうへぇと抜けた声を零した。
 こうなると長いことは昔から知っている。
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