相似で逆接な在り方
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を抱えたのか。どれだけの苦労を背中に背負ったのか……なのに、好きにしていい、と言った彼女には頭が上がらない。
また桃香は吐息を小さく漏らす。
気付かなかった未熟な自身への自嘲の笑みであり、白蓮に対する感謝の笑み。
――同じ食客として働いてた星さんはそのことに気付いてたんだろうな。
知られていないことではあるが、一度だけ誘ってみたのだ。
幽州がこれだけ安寧に包まれているのなら一緒に大陸を救わないか、と。
白蓮自身、星を桃香に着いて行かせようと同じ仕事を与えたりもしていた。
が、結果は現状である。
桃香は不思議と、どちらにしろ星は付いて来なかったのだろうと納得していた。
飄々としていながらも義理と人情を重んずる星のこと、抜けるとしても黄巾の間は絶対に抜けなかったと予測している。
ただし、いつかは仲間になってくれるだろうという、漠然とした勘のようなモノは持っていた。星が期待と興味を隠しても居なかったからかもしれない。
そんな予測と勘に反して、彼女は白蓮に仕えた。
そのまま仕えたのは……間違いなくとある人物の影響だと確信している。
――次に出会ったのが朱里ちゃんと雛里ちゃん……そして……秋斗さん。
思い出して、彼女の表情が悲痛に沈む。
あんなに仲が良かった二人の少女が、今は争い合う仲になってしまった。
そして彼は……
首を振る。大きなため息と共に後悔が吐き出される。
あの時の目を桃香は忘れない。あの時の……交渉で見つめた絶望の目を。
昏い暗い、何も希望を映さない瞳。信頼の中に狂気を孕んだ闇色。壊れる寸前の人間の眼。
はらり、と零れた泪。
震える吐息を吐き出した唇。
泣いているのに、自嘲するように歪んで行く口元。
――あの人が、来るんだよね。
思い出に浸ることはもう出来なくなった。幾日前に劉璋から聞いた事案によって。
自分が絶望に堕とした人物が此処に来る。
嘗ての仲間が敵として此処にやって来る。
――私じゃなくて、曹操さんと一緒に戦うって決めたあの人が……。
近くで見てきたからこそ、共に戦ってきたからこそ分かる恐ろしさ。否、語弊がある。
桃香にとって秋斗は……“理解出来ないから”こそ恐ろしい。
敵同士で殺し合いをさせ、効果があるとなれば迷わず特攻させ、誰かに止められても自分の身を顧みずに死地へ赴く。
命というのはもっと、もっと大切なモノで、そんな簡単に扱っていいモノでは無いだろうに……そう桃香は思う。
ただ、意図してそう思わされていることを彼女は知らない。
桃香は秋斗の影の努力を知らず、徐晃隊の想いは秋斗への忠義より桃香に伝えずと彼ら自身が口を封じており、彼に至っては劉備という大徳はそうあれ
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