相似で逆接な在り方
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いつからだろう……平原……ではまだ苦手だった。うん……白蓮ちゃんのことがあってから、かな。
変わったと納得できるのは連合戦の後。それも白蓮が侵略を受けてからと桃香は考える。
仕事だから、とやっていたのがそれまでの期間で、苦手とも思わず進んで取り組むようになったのはあの出来事があってからだ。
過去を振り返れば思い出さずにはいられない出来事。自己の罪過をはっきりと自覚し、無力に打ちのめされた時期。
困ったような、呆れたような苦い笑みを浮かべた彼女は小さな吐息を吐き出して宙を仰ぐ。
「あっと言う間だったなぁ……」
独り言が止まらない。自分でも寂寞に浸っているなと自覚しながらも物思いに耽る。
――初めは愛紗ちゃんと鈴々ちゃん。
思えば長いようで短い時間だった。
始まりは三人。
人を助けながら旅をしていた愛紗と鈴々に出会い、三人で村々を回り人助けをするようになった。
彼女らの武力のおかげで義勇軍が立ち上がり、主と呼ばれるようになってからは人を率いて戦うようになった。
初めの頃を思い出すと桃香の表情に悲哀が浮かぶ。割り切り始めたとは言っても、やはり最初の頃の戦いは忘れられないらしく。
己の命令で死に行く人々。
生きたいと望んでいたはずなのに死んでいく男達。
何度も泣き、何度も悔いた。
ただ命ずるしか出来ない己の無力。慕ってついて来てくれるのに自分では救えないその無力を。
深手を負った兵士の死に際で、止めようとしても流れ続ける命の源、励ましても慰めても笑顔を見せても救われることの無い命。
そういった時、男達はいつも最後の最後で笑う。自分が看取る時はいつでも笑顔で去って行く。
苦しいはずなのに、痛いはずなのに笑顔を見せる男達の想いを、桃香も始めは分からなかった。
悲壮に沈んでいた時、愛紗が伝えた言葉は忘れない。
彼らは夢を見た。
彼らは夢を追い掛けた。
彼らは夢を信じた。
だから笑顔で最期を迎え、悔いを見せずに旅立てる。
彼らの、義勇軍の皆の夢は……あなただ、と。
ただ目の前の人を救えるだけでいい、と義勇軍を率いながら考えていた桃香は、その言葉を聞いた時に変わった。
それではダメなのだ。目の前すら救えない自分ではダメだ。何か自分にも出来ることはないか、何か自分にも返せるモノは無いか。
そうして辿り着いたのが……あの大地。
――次は白蓮ちゃんと再会して、星さんに出会った。
旧知の友が治める優しい土地。
仲が良かったことも相まって、そして幽州の戦力を白蓮が欲しがっていたことも相まって、とんとん拍子に食客となれた。
街を治め、太守としても経験した今なら桃香は分かる。
白蓮がどれほどの無茶を推して義勇軍
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