相似で逆接な在り方
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を理解しながら。
――これがいい傾向なのか悪い傾向なのかは分からないけど、雛里と月に会ったらきっと答えも出るわよね。
考えすぎても仕方ない。一人で悩み過ぎてもドツボにはまるだけ。自分は一人では無いのだと言い聞かせ、彼女は別の話をしようと思考を切り替えた。
「あんた何か予定ある? 当然ボク達は着いて行くけど」
「んー……あるっちゃあるけど……一回外に出ないとダメだな」
「なんで?」
情報収集をする以上は外に出るのは下策だ。一度出て直ぐに戻って来ても怪しまれるだけである。意味するところが分からずに詠は問い返した。
「クク……まあ、別に“取って来なくてもいいか”、服は持ってきてるんだし」
疑問の視線を受け止め、悪い顔で彼は笑った。
兵士達はその顔に見覚えがあった。悪戯を企んでいる時はいつもこんな顔をしていたのだから。
服は持ってきてる、そこまで聞いて詠が彼を睨みつけた。
「趙雲を誘って黒麒麟の真似してお酒を飲みに行く、とか言わないでしょうね。一対一は絶対に許可しないわよ」
情報収集だとしても認められない。さすがに先程のことがあったからには看過出来るはずもない。
咎めると、彼は首を振った。
「さすがにそれはしない。でも……近い、かな?」
「あんた……まさか……」
もう読み取れた。この男が何を考えているのかを。そこまで言われれば詠にも分かる。
服が必要なのは彼が黒麒麟を演じる為だ。“取って来なくてもいい”のは、ソレをこんな場所で使うつもりが無いからだ。
出来ることは、彼がすることは自然と限られてくる。
黒麒麟として何かをするのなら、自分達に与えられた仕事以外には……一つだけ。
「劉璋より先に、桃香に……会いに行くつもり……?」
予測を語ると、彼は黙して詠をじっと見つめた。楽しそうに、嬉しそうに。
呆れたようにため息を吐いてから、くつくつと喉を鳴らして苦笑した。
「会いに行くのは正解。でもそれだけじゃ面白くない」
こういう時、彼の思考はいつでも読めない。あの官渡の時と同じく、何が……否、どれだけの影響を狙っているのか、詠には読めなかった。
不敵な笑みがより深くなった。悪巧みをしている彼の雰囲気が、乱世を楽しんでいる華琳と重なった。
「イイコトをしよう。華琳の好きそうな楽しいことを。出来るかどうかはお前さんの……“荀攸”の知恵を貸してくれ」
いつでも覇王と並ぼうと頭を悩ます彼にとって、機を見て敏なりなど当たり前。思い付いたのなら実行に移さずに居られない。
幸いな事に軍師は居る。彼の思い付きの策を研鑽出来る頭脳明晰な曹操軍の軍師が。
嗚呼、と二人の兵士は思う。
久しぶりに見つけた戦前の彼の姿。不敵な笑みも、読め
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