暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
相似で逆接な在り方
[3/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を理解しながら。

――これがいい傾向なのか悪い傾向なのかは分からないけど、雛里と月に会ったらきっと答えも出るわよね。

 考えすぎても仕方ない。一人で悩み過ぎてもドツボにはまるだけ。自分は一人では無いのだと言い聞かせ、彼女は別の話をしようと思考を切り替えた。

「あんた何か予定ある? 当然ボク達は着いて行くけど」
「んー……あるっちゃあるけど……一回外に出ないとダメだな」
「なんで?」

 情報収集をする以上は外に出るのは下策だ。一度出て直ぐに戻って来ても怪しまれるだけである。意味するところが分からずに詠は問い返した。

「クク……まあ、別に“取って来なくてもいいか”、服は持ってきてるんだし」

 疑問の視線を受け止め、悪い顔で彼は笑った。
 兵士達はその顔に見覚えがあった。悪戯を企んでいる時はいつもこんな顔をしていたのだから。
 服は持ってきてる、そこまで聞いて詠が彼を睨みつけた。

「趙雲を誘って黒麒麟の真似してお酒を飲みに行く、とか言わないでしょうね。一対一は絶対に許可しないわよ」

 情報収集だとしても認められない。さすがに先程のことがあったからには看過出来るはずもない。
 咎めると、彼は首を振った。

「さすがにそれはしない。でも……近い、かな?」
「あんた……まさか……」

 もう読み取れた。この男が何を考えているのかを。そこまで言われれば詠にも分かる。
 服が必要なのは彼が黒麒麟を演じる為だ。“取って来なくてもいい”のは、ソレをこんな場所で使うつもりが無いからだ。
 出来ることは、彼がすることは自然と限られてくる。
 黒麒麟として何かをするのなら、自分達に与えられた仕事以外には……一つだけ。

「劉璋より先に、桃香に……会いに行くつもり……?」

 予測を語ると、彼は黙して詠をじっと見つめた。楽しそうに、嬉しそうに。
 呆れたようにため息を吐いてから、くつくつと喉を鳴らして苦笑した。

「会いに行くのは正解。でもそれだけじゃ面白くない」

 こういう時、彼の思考はいつでも読めない。あの官渡の時と同じく、何が……否、どれだけの影響を狙っているのか、詠には読めなかった。
 不敵な笑みがより深くなった。悪巧みをしている彼の雰囲気が、乱世を楽しんでいる華琳と重なった。

「イイコトをしよう。華琳の好きそうな楽しいことを。出来るかどうかはお前さんの……“荀攸”の知恵を貸してくれ」

 いつでも覇王と並ぼうと頭を悩ます彼にとって、機を見て敏なりなど当たり前。思い付いたのなら実行に移さずに居られない。
 幸いな事に軍師は居る。彼の思い付きの策を研鑽出来る頭脳明晰な曹操軍の軍師が。

 嗚呼、と二人の兵士は思う。
 久しぶりに見つけた戦前の彼の姿。不敵な笑みも、読め
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ