相似で逆接な在り方
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いか?」
「……やっぱてめぇ殺す」
「はははっ! 怒るなよ、余計にハゲるぞ?」
「ぐっ、おぉぉ……隊長、こいつ殺していいか!?」
「いいぞ、存分にやれ、ハゲ」
「てめぇもかぁ!」
頭の痛くなる話題を繰り返す彼らはやはりバカ。秋斗も混じれば止まらない。
周りの人々の視線から恥ずかしさも湧いて来て、若干だけ頬を赤らめた詠は怒鳴った。
「いい加減に黙りなさい! 此処はボク達の街じゃないんだから恥ずかしいじゃない!」
怒気に静まり返る場。幾多もの視線が彼女に集まる。ハッと気づいた詠は顔を真っ赤にして俯いた。
「す、すまねぇ」
「申し訳ねぇ」
「クク、えーりんは可愛いなぁ。皆さんもそう思ったんじゃねぇですかい?」
直ぐに謝った男達とは違い、彼だけは詠を茶化した。しかも、普段使わないおかしな言葉遣いで。
何言ってやがるこいつ、という目で男達は彼を見やる。詠に至っては恥ずかしさが上乗せされて震えだした。
うんうんと頷いて、秋斗は大仰な手振りで腕を巻き、民達をぐるりと見回す。
「喧嘩じゃねぇからご容赦を。俺らはこの街に来たばっかりでしてね。早々に警備隊に追い掛けられるのは御免なんでこの辺でこの場からお暇致しやす。
大陸でも有数の名店、娘々の新設店がもうすぐ出来る。どうぞそちらをよろしくお願いしますぜ」
にっこりと営業スマイルを浮かべて一礼を行った秋斗の所作は完全に不意を突いた。
民の頭には店の名だけが刻まれる。良くも悪くも注目を集めた。思考誘導と誤魔化しは彼の十八番だ。
自分達に注目していた民の間に投げ込んだ情報を聞いて……いや、彼が一瞬で行った心理操作に、詠は驚きを隠せない。
グイと詠の手を引いた秋斗は、二人の男達を後ろに連れて歩き出す。もう此処には用は無い、と。
しばしの沈黙。歩く速さはゆっくりと。詠に思考させる時間を与えるように。
「此処でも店長の店が繁盛するように……っても店長の店が繁盛しないわけないがな」
「……相変わらずね」
「ん? 何がだ?」
ぽつりと呟いた詠に対して、秋斗は首を傾げた。
「……あんたがあんたらしくて安心したってこと」
「そうかい」
深く聞こうにも語らない。詠は出しそうになった言葉を隠した。言わないなら聞かないのが秋斗という男で、それを知らぬ詠でも無い。
――心理操作と心理掌握。まるで昔のあんたみたいって思った。
人心の操作が上手い男なのは知っていたが、それでも今回の即時対応力に違和感を覚えた。
カマをかけて、相変わらず、と言っては見たが、間髪入れずに聞き返して来た彼はやはり記憶を失っているとしか思えず。
昔の秋斗ならきっと、これくらい詠の方が上手く出来ると彼女に向けて言う。彼女が試したこと
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