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異界の王女と人狼の騎士
第六十話
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ビを見ているみたいだ。やっぱりだいぶ怒っているんだろうな。
 仕方ないので更に窓ガラスを強く叩いた。深夜だということもあるから結構響く。非常識この上ないのは分かっているけど、今は緊急事態なんだ。ごめんね、ご近所さん。

 少しすると王女がやってきてベランダの窓の鍵を開けた。
 俺は開けると飛び込むように部屋へと入る。

「シュウ、五月蠅いわよ。近所迷惑じゃないの」
 その声には明らかな怒りが含まれている。
「だいたい、どういうつもりなの? 他の人間達は寝ている時間なんでしょう? 非常識この上ないんじゃないの。……まあそんなことはどうでもいいわ。でもね、私が言いたいことが分かるわよね? バッタの脳みそくらいしかないお前でも分かるわよね、私がどうして怒っているかわかる? さっきの事よ! 一度ならず二度までもあんなことして」

「すまん、ごめん。言いたいことはわかるけど、後にしてくれないか? バイトの時間があるんだよ。もたもたしてられないんだ」
 そう言いながら俺は下着を押し入れの3段ボックスから取り出し風呂へと急ぐ。
 ここで話がぶりかえると長くなりそうだ。

「バイトって? 」
 少し興味ありげに尋ねる。

「姫にはまず理解できない事だけどね。俺の生活費は全部自分で稼がないといけないんだよ。……でも高校生だからできるバイトって決まってるんだよ。今から新聞配達の仕事があるんだよ。そんで3時には店に行かないといけないんだ。時計を見てみて。今の時間、わかるよね。もう時間があんまり無いだろ? ……だから、じゃ」
 姫に理解をしてもらうにはアルバイトとは何かから説明しなくちゃわからないだろう。そして、どうして生活の為に俺がアルバイトをしなければならないかの理由を説明しなくちゃならない。これにはかなり時間がかかる。
 しかし、今の俺には時間がないんだ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 」
 王女が叫ぶが無視。
 大あわてで服を脱ぎ捨てると、シャワーを出す。どす黒い水が俺の体から流れ落ちていく。
 髪の毛や体に張り付いた血液や化け物や人間の体液がお湯で一気に流されていく。
 石けんをたっぷりつけて体を擦る。擦る擦る。髪も3回洗い直す。
 血の臭い、動物の臭いを完全に落としておかないと大変なことになりそうだからな。それでも臭いを全部落としたかというと自信が無い。

 風呂から出ると髪を乾かし、ジーンズとシャツを着た。
 王女は何か言いたげに近づいてきた。俺に文句を言いたいのは間違いない。

「ごめんね、姫。話さないといけないことがあるのは分かっているんだけど、時間が無いんだ。バイト遅れちゃうと他の人に迷惑かけるんだ。帰ってから聞くから……ごめん。それから、子供は早く寝ないといけないだろ? 」
 そういうとブルゾンを
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