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鋼殻のレギオス IFの物語
第二章 【Nameless Immortal】
壱 バカばかりの日
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い。数を重ねればその中で死者は出る。
 汚染獣から比べれば武芸者の体は遥かに柔らかくて脆く壊れやすい。医療技術が高くとも心臓を貫かれれば流石に死ぬ。雄性体に噛まれれば首から上が消える。
 場合によっては戦後の治療が上手くいかないことだってある。
 矛盾する言い方ではあるが戦死は「稀によくある」というやつだ。
 
「だから悲しいけど、それは仕方ないことだと思います」

 戦死者を限りなく減らしたいなら簡単だ。天剣授受者に戦わせればいい。
 天剣授受者が戦線に立つのは老成体か大群時の要請だ。それ以外は他の武芸者達が相手をする。
 その決まりを無くし常に天剣授受者が出ればいい。大勢の武芸者の代わりに一人置くだけで事足りる。
 だがそうだからといって戦死者の存在を「天剣授受者の怠慢」と言えるだろうか。
 ひいてはそれ以上の力を持つ「女王の怠慢」となるだろうか。
 
 それは違うだろうとレイフォンは思う。ただ管轄が違うだけだ。
 あの戦場は武芸者たちが自ら納得して立つ場だ。それを一方的に奪うのは多分違う。
 力不足だというのならば分かる。だが問題なく倒せる技量と技術がある。
 レイフォンは養父であるデルクを思い浮かべる。彼が培った技量、それをただの無用な肥やしとされる。
 思い浮かべ嫌な気持ちになる。それはきっと矜持の簒奪だ。いずれは皆がただ腐ってしまう。
 それにレイフォン個人としても冗談ではない。収入を、稼ぎ場を奪われてしまう。

 今のレイフォン達の立場もそれに近い。けれどそこには思い違いもある。
 ここにいるのは学生という点だ。グレンダンで言うならば初陣前の若人だ。
 覚悟や技量は違う。育てられる立場にある。本来ならば同列に語るは違う。
 しかしそれを理解出来る土台がまだ二人には無い。戦死という価値観を自分に照らし合わせて語ってしまう。

 だからレイフォンとクラリーベルには分からない。知らぬ誰かの戦死にそこまでの感傷が無い。 
 自分たちが出れば減らせるはずの死者。自らに課せられた制約をも理由にして仕方のないことだと言いきれてしまう。
 それでも唖然としたニーナの表情にレイフォンは僅かに胸が痛む。

 二人の価値観はニーナには理解できないものだ。
 だが幾たびの経験から語る二人に返せる言葉がニーナには浮かばない。ただニーナは強く歯噛みする。
 
 そしてそんなニーナを見ていたレイフォンは手遅れになる前にと前に出て口を開く。

「クラリーベル。そろそろ手を離した方が良い。動かなくなってる」
「え? あ、ちょ、大丈夫ですかアイシャさん!!」

 クラリーベルから解放されたアイシャの体が崩れ落ちる。受け身も取れず倒れて鈍い音がする。
 レイフォンがが背中を何度か叩くと咳き込みながらアイシャ
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