第二章 【Nameless Immortal】
壱 バカばかりの日
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に かえった
「……いつも行く商店街は閉まっている店が多くてな。ここまで足を延ばすことになった」
「まだ後処理で忙しい人それなりにいますからね。引きこもってる人もいそうですし」
クラリーベルが軽く言う。
少しだけ憂いを滲ませた顔でニーナが頷く。
「その通りだ。……うちの寮長は趣味で薬学をやっていた関係で応援に呼ばれた。友人は恋人が重傷を負ってな。相手の意識が戻って、やっと気力を取り戻した」
「何か満身創痍って感じですね」
「そう……だな。だから未だに少し、慣れない」
店の壁に背を預けたニーナの視線は先ほどまでレイフォン達が見ていた方へと向いていた。
何事もなかったかのように日常を送り休暇を楽しんでいる学生たち。
余りにも変わらない商店街を満たす彼らをニーナは遠くの景色を眺めるように見る。
どこか意識の乖離があるのだろう。彼らと自分の間にそれを感じてしまっている。
「……被害の最終的な内訳が昨日出た。見たか?」
「さっきから重いですね。まあ、チラッとだけは。死者が二桁で収まってた記憶はあります」
必要に駆られた技術は他に比べて飛躍的に伸びる。
今の医療技術の水準は非常に高い。習熟した専門家の居ない学生の街ツェルニでもその恩恵の多くは享受できる。
ただの外傷だけならば手術室に運び込まれた時点で生きていればその多くが生きながらえる。
だから汚染獣襲来の当日がピークでそれ以降死者数はさほど増えなかった。
術後も安定せず病床に就いていた者。安定期に入る者と死んだ者。その区切りが昨日出された。
保険や死因の関係上で一応の区分ともなるもので、今後の期間は呼称が変わる。
死者を除いた負傷者の数は千を越えた。戦線に出たほぼ全員が何らかの形で診療は受けたのだから当然だろう。
病床数の関係もあるがその大半は既に治療も終わっている。意識未明の患者を除き殆どの者が一応の形では日常の中に戻った。
それが不完全なものであるにせよ、そのことも昨日出された区切りの理由になっている。
「まだ眠りから覚めない者もいるというのにな」
「最後の一人までとなれば下手したら何年もです。酷な様ですがそこまで付き合えませんよ」
「分かっている。頭ではな」
慣れ、なのだろう。
そんな時分が己にもあっただろうかとレイフォンは思うが記憶は朧だ。
そも八十人と聞いて「あの有様でそれだけだった」と「そんなに死んだのか」の両方が混在している。そしてどちらにも感傷が薄い。
見ている限りクラリーベルにしても世間話の体で、アイシャに至っては興味が無さそうに買った物の確認をしている。
近くで話していてもここにも距離がある。どちらかといえばレイフォン達も向こう側だ。
「居心地が
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