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髑髏の微笑み
1部分:第一章
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をしたってわけさ。あれはあいつ等がアラモに攻め込んだからだ」
「まあな。アラモは残念だったさ」
 これが当時のアメリカの考えだった。実際はテキサスはメキシコ領でありそこにアメリカ人達が勝手に入植してメキシコ側がこれに対処したらアラモに立て篭もり、そうした事態になったのである。米墨戦争は実際はアメリカの侵略である。なおこの時にテキサスと共にアメリカに割譲されたのが今彼等のいるカルフォルニアである。
「で、今俺達がいるカルフォルニアもアメリカのものとなった」
「それで俺達が今金を掘っている」
 ディックはそれに応える。街はもう薄暗くなろうとしていて次第に夜の闇が迫ってきていた。
「それと一緒に人も寄ってきたな」
「どっちにしろ金が動いてるよな」
「ああ」
「掘れればよし。掘れなかったら」
「今までの賃金で何かするか」
「何をするつもりなんだい?」
「そこまではまだわからないな」
 ディックはまだそこまで考えてはいない。
「店とか開くのもいいな」
「他のことはどうだ?」
「つってもまだここには何もないぜ」
 まだまだ荒地しかない。当時のカルフォルニアは荒々しい未開の地であったのだ。
「とにかく今は働くだけだな」
「そうか」
「所帯も持ちたいんだけれどな」
「それが一番難しいかもな」
「おい、そりゃどういう意味だよ」
 同僚の言葉に口を尖らせる。
「そう言われるのが嫌ならさっさと彼女を作るんだな」
「ちぇっ」
 舌打ちをしながら同僚と別れて酒場に入る。そこで仕事の後の一杯としゃれ込むつもりだったのだ。
 木で急ごしらえで造られた店はかなり荒っぽい。砂埃が前に舞っていて店の中も埃の匂いがする。暗くなりかけている店の中には鯨油の匂いとそれで照らされる灯りがあった。その中で荒くれ者達が酒を飲み、カードを楽しんでいる。西部でよくある酒場の姿であった。
 荒くれ者達の顔は様々だった。白人ばかりではない。黒人やヒスパニック、そして中国人の顔もある。西部はこうした雑多な有様であったのだ。黒人のガンマンやカウボーイなぞざらだったし中国人達も鉄道の施設や金を掘る為にここにいた。ヒスパニックも同じである。
 いないのはインディアンだけだった。彼等はアメリカという国にとって倒すべき敵でしかなかったのだ。元々いる筈だが外敵となっていたのだ。そしてここにもいない。狭い居留区に押し込められるか命そのものを奪われるか。どちらにしろアメリカという国にとって彼等はあってはならない存在だったのだ。
「よおディック」
 カウンターにいる目つきの悪い男が彼に挨拶をしてきた。
「今日はもうあがりかい?」
「そうさ、ジョニー」
 ディックはニヤリと笑ってその目つきの悪い男に返した。
「そっちもそうなんだろ?」
「ああ、今日は上々だったぜ」
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