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魔女の足跡
魔女の足跡
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て墓に参っていた。そしてある日それを見たのであった。
「これは」
 それを見た牧師の顔が暗くなった。
 墓を見る。そこに妙な染みがあったのだ。
 ドス黒い染みである。それは小さいがはっきりとした形になっていた。
 足跡である。牧師はそれがどうしてついたのか何処となくわかった。
「お婆さんが」
 彼は裁判での最後の老婆の言葉を思い出した。彼女は確かに今復讐を果たしたのであった。
 その足跡は遺族により削られて消された。だが次の日にはまた浮かび出ていた。
「何度削っても無駄でしょう」
 牧師は遺族に対してこう述べた。
「これは。お婆さんの復讐なのですから」
「復讐」
「はい」
 彼は答えた。
「あの時の言葉のままです」
 そう言いながらバックスの墓を見下ろした。
「御自身の無念さと怨みを伝える為に」
 その足跡はあるのである。何が起こったのかを永遠に残す為に。
「消えはしません。これはこのまま置いておきましょう」
「はい」
 遺族も諦めた。そして牧師の言葉に従った。
「何が起こったのかを。後の世に知らしめる為に」
 牧師は小さい声でこう言った。
「我々の愚かな行いを」
 これが最後の言葉であった。なおこの足跡は今でも残っている。魔女狩りという愚かな行為の証の一つとして。何時までも何時までも。


魔女の足跡   完


                                     2006・2・19
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