魔女の足跡
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のまま言葉を続ける。
「あんたの墓を踏み付けてやる。そしてその足跡を永遠に残しておいてやるからね」
老婆はさらに叫んだ。
「あんたの悪事を皆が何時までも覚えているように。きっと踏んでやる」
「お、おい」
バックスは震える手で兵士達に命じた。
「裁判は終わった。さっさと連れて行け」
「は、はい」
その兵士達も顔を白くさせていた。だが命令に従い老婆を左右から掴んだ。そしてそのまま老婆の家へと向かう。
「これにて閉廷とする」
裁判官は最後に言った。彼も顔を白くさせていた。バックスも。そして村人達も同じであった。皆今の老婆の言葉に恐怖で真っ青になっていた。そして何か恐ろしいことが起こるのを予感していた。
処刑は翌朝行われた。だがそれを見物に来る者は誰もいなかった。この時代死刑といえば一つの大きなショーであり処刑される囚人の周りには人だかりができ、売店等も出る程であった。だがこの時ばかりは違っていた。村人達は誰も出ようとはせず、バックスですら家に閉じ篭もっていた。だが処刑される老婆の声だけが村に響いた。
「覚えておいで!」
これが老婆の最後の言葉であった。怨みと憎しみに満ちた言葉であった。それが朝の村に響いた。それは何時までも人々の耳に残っていた。
それからバックスは程なくして異常な行動を示すようになった。酒に溺れ、常にあらぬところを見て叫んでいた。
「来るな!来るな!」
彼は虚空を見てそう叫ぶのだった。
「御前は死んだのだ!さっさとあの世に行け!」
そして銃を撃つ。だがそこには誰もいない。
「死ね!さっさと死ね!」
部下達がそれを制しても暴れてどうにもならなかった。
「御前は魔女なのだ!それがわかっていないのか!」
そして日に日に憔悴していった。最後には立っていることも出来なくなり床に伏すようになった。だがそこでも彼は呻き続けていた。
「あいつが、あいつが・・・・・・」
昼も夜も呻き続ける。そしてもがいていた。それを誰も止めることはできなかった。やがて顔が紫になっていき、苦悶の表情が貼り付いていた。だが最後に彼は言った。
「わしの墓はとびきり高価な大理石で作れ」
今までの悪事で溜めた金をそれに注ぎ込んだのだ。
「魔女の足跡なぞ決してつかないようにな」
そう言うとベッドから転げ落ちて死んだ。白目を剥き、口からドス黒い舌と涎を垂らして。まるで首を絞められたかの様に無気味な顔色で死んでいた。見るも無残な最後であった。
墓は遺言通り大理石で作られた。だが墓に来るのは牧師だけであり村の者はおろか家族ですらも墓に参ろうとはしなかった。これが悪行の報いであろうか。
牧師とても気が進まなかった。だが彼は神に仕える者としての責務におい
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