魔女の足跡
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るか言うまでもなかったからだ。
だがこれで諦めるような男ではなかった。村長も議会も動かないとなれば自分が動くだけだった。彼は早速動くことにした。
「魔女は顎が突き出ている」
当時魔女に関してこう言われていた。魔女が水に浮く、という話と同じく全くの迷信であるがこう言われていたのである。
そして同時にこう思われていた。
「魔女は老婆であることが多い」
思われていたのである。確かな証拠なぞ何もない。何処にもないのだ。これは人々のイメージに過ぎない。童話にもある全くの空想である。一言で言うと出鱈目である。
だがこれが当時は多くの根拠となった。少なくとも魔女狩りに関しては。何故なら真っ当と思われる聖職者によって本に書かれたからだ。その真っ当な聖職者が狂人であってもだ。
狂人でなければ腐敗していた。当時の教会の腐敗の酷さは筆舌に尽くし難いものがある。ルターが現われたのもそれが背景にあった。彼も悪魔と罵られている。これは教会の腐敗と堕落を批判したからである。
その本には全く根拠がないと言ってもよい。少なくともそれには空想が入っていた。むしろそれしかないと言っても過言ではない程にまで。その空想、いや妄想により多くの者が命を落とした。それが魔女狩りであった。多くの無実の人が炎に焼かれた。それが魔女狩りであった。
だがそれにより命を落とした者がいたのも事実である。それはこの村においても同じであった。バックスは次々と目ぼしい老婆達を物色していた。この時彼は貧しい者は相手にしなかった。あくまで財産を持っている金持ちばかりを狙っていた。そして遂に生け贄を発見した。
「魔女はいる!」
彼は叫んだ。そして一人の金持ちの未亡人を引き出して来た。
「この老婆は魔女だ!」
彼はまた叫んだ。その未亡人はバームという老婆であった。
村にいるごく普通の善良な老婆である。金持ちであり顎が出ているという意外は何も変わったところがない。だがバックスはそれこそが魔女の証拠だと騒ぎ立てたのである。
彼は主張した。このバームこそ悪魔の手先であると。老婆もまた必死に釈明した。だが彼はそれを全く出鱈目なものだと否定してみせた。
「魔女は嘘をつく!」
彼はこう主張した。彼が嘘をつくということは問題ではなかった。
「嘘に惑わされてはいけない!ここは嘘を暴くべきだ!」
次に拷問による自供をさせようとした。魔女狩りにおける基本であった。彼はサディストでもありよくインディアンの若い娘を捕まえては惨たらしく殺していた。今回も拷問を楽しもうとしたのだ。
だがそれは適わなかった。老婆があまりにも高齢な為牧師がそれを止めたのだ。この牧師は老婆を知っていた。だから何としても救おうとしていたのだ。
だが彼は老婆を救えな
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