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鶴の舞う空へ 
第1部 異世界へ
3.六年前のあの日
鶴の舞う空へ
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ーこの世界に来たこと、俺は運命だと感じるんですー
3.六年前のあの日
 「海斗、こちらへ。私についてきて下さい。」
「はい。」
海斗と風早は牢を出た。外には、草原の真ん中の少し離れたところに、大きな屋敷が建っていた。牢は洞窟のような場所にあったのを、海斗は外に出て、初めて知った。洞窟の牢すぐ横は林になっており、川の流れる音がかすかにする。おそらく林の奥で小川が流れているのだろう。二人が草原の先の屋敷へ歩いていると、冬の名残を残した春風が、草や木々を揺らした。海斗はその風の運んできたにおいをなぜか懐かしく感じた。建物や服装、言語などから考えて、ここが異世界だとはいえ、日本に近い国であるためだろうか。 
 宮の門の前に着くと、兵が多く集まっており、どことなく慌ただしい様子だった。
「...すごい人ですね。こんなにたくさんの人が仕えているなんて...。」
「ええ、だいぶ兵が集まってきましたね。さあ、海斗こちらへ。」
海斗は風早に連れられて、宮の中へと入っていった。長い廊下を多くの兵とすれ違いながら、歩いて行った。
「ここは...お城なんですか?」
「そうか、君は何も知らないんですね...。」
そうほほえみながらつぶやいた風早の目は、どことなくさびそうで、海斗は少し戸惑ってしまった。風早は少し立ち止まり、窓の外の青い空を見上げた。そして、少し立つと、何も言わず歩き出した。海斗も何も聞かずついて行った。長い廊下を一度曲がってまた少し廊下を歩くと、大きな扉があった。それを横に引くと、たくさんの剣や鎧や槍が置かれているのが見えた。どうやらここは武器庫らしい。風早は入った早々に隙間をわずかに残して閉めた。扉の隙間から少し光が部屋に入り、うっすらと明るかった。風早は一本の剣を手に取り、海斗に差し出した。海斗はそれを両の手で受け取り、真剣の重みをまじまじと感じていた。
「真剣は初めてですか?それは真剣の中では軽い方ですよ。」
「やはり、竹刀とは違う重みがありますね。」
「ええ、同じ重さの物ともまた違う重みです。これが...命の重みなのかもしれません。」
「命の...。」
海斗は思わず剣をぎゅっと握った。風早はその手をみて海斗にこう続けた。
「君にはきちんと話さなくてはなりませんね。鶴姫様の父君は風盛(かざもり)様、母君は(せん)様、そしてお二人のたった一人の実子が鶴姫様です。千様はお体が弱く、鶴姫様をお産みになられた後はお子様の産めるお体ではなくなったため、お子様は姫たった一人なのです。風盛様も千様を大切になさっており、御正室の千様以外女性をめとろうとしませんでしたし。風盛様は賢明なお方で、私たちの豊洲国は太平でした。しかし、六年前、佐伯国が国に攻め込み、私たちの故郷は落とされ、なくなってしまいました。その日、当時9歳の鶴姫様はご両親と多くの
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