第十六章 ド・オルニエールの安穏
第二話 悲喜劇
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るのよ。あんたたちには頼んでた事があった筈なんだけど?」
「あっ! えっと……その……えへへ」
「へぇ……つまり、皆してさぼってたってこと」
「「「「ひぃいいい……」」」」
全身をガタガタと震わせるギーシュたちをじろじろと見ていた凛の口元が、鼠をいたぶる猫のようにニヤリと歪む。その笑みに気付き更に身体を大きく震わせるギーシュたち。
……一人マリコルヌだけは何故か嬉しげであったが。
「で、どうだったのかしら? さぼって飲むお酒は美味しかった?」
「い、いえ。そ、その、ちょっと休憩と立ち寄った所で間違って酒が出てきたのであって、故意じゃないんですよ! 本当なんです! 信じてくださいっ!」
近くに寄らなくても分かる強いアルコールの香りに凛が、その目を刃物の様に尖らせ光らせながら睨みつけると、ギーシュがわたわたと手を振りながら言い訳を始めた。
まるで全ては秘書のやったことですと何処かの食堂の店員に責任を押し付けるギーシュの醜態に、凛がゆっくりと指を突きつけた。
その指先には、黒い何かが渦巻き始めていた。
これまでの経験により、それが何を意味するか知るギーシュたちは、慌てふためき一斉に深々と頭を下げた。
「「「「すいませんでした〜〜〜〜っ!!」」」」
素直に謝罪したことに一応の満足を見せたのか、凛は突きつけていた指を戻し腕を組んだ。
「……で、結局どういうこと?」
凛と水精霊騎士隊の漫才のようなやりとりを眺めていたルイズが、呆れた声を上げると、ギーシュはちらちらと凛の様子を伺いながらも渋々といった様子で口を開いた。
「そ、そのだね。本当に最初は頼まれた事を調べていたんだが、ぼくらも専門じゃないからどうも上手くいかなくてね。で、ちょうど昼時だったから近場のお店で食事をしていたんだが」
「で、ついお酒を飲んでしまったと」
「いやっ! 本当に飲むつもりはなかったんだよ」
ルイズの「こいつら駄目だ」みたいな顔で溜め息をつく姿に、ギーシュたちが慌てて首を降り出す。
ギーシュの後ろに隠れていたレイナールが横から顔を出すと、必死に援護の声を上げる。
「本当なんだよ。ただちょっとお昼を取りながら隊長の事を話していたら、他の客や店員が酒やらツマミとか色々出してくるから。だから断るのもなんだし、隊長の話をしたら予想外に好評で……」
「だから、その、な……」
「ほ、ほほ、本当なんですよ。ぼくがこう水精霊騎士隊隊長エミヤシロウのリネン川での一騎打ちっ! 初手で現れたのはなんとガリアで天下無双と謳われたソワッソン男爵っ! しかし我らが隊長エミヤの相手には余りにも不足であったっ! 風さえ追えない速度でソワッソン男爵に迫り剣を一振りっ! たった剣の一振りでその杖を叩き切って見せたの
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