第十六章 ド・オルニエールの安穏
第二話 悲喜劇
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が熱い……」
「なに発情してんのよあんたは」
「あっ痛っ!? な、何するのよジェシカっ!」
「あんたが場所考えないで発情しているのが悪いんでしょ。ていうか誰があんたのシロウか」
「は、発情なんかしてないわよ!」
「そう? あんな蕩けた顔をしていたら誰でもそう思うわよ」
「な―――何を」
「って言うか、流石にアレはないでしょ。間近で見てるあなたが、なんでそうなるのかちょっとわかんないんだけど? 頭、大丈夫?」
「それどう言う意味っ!」
取っ組み合いが始まりそうなシエスタとジェシカの様子であったが、それを止める気力は士郎には既になかった。
剣士エーミヤ・シェロウを称える観客の声が劇場内に木霊す中、士郎はただ頭を抱えることしか出来ないでいた。
メイジでなく剣士が活躍する劇であるが、本来はこのような大劇場で行われることはない。道端や酒場で行われる大道劇や人形劇、それに歌が精々だろう。しかし、この劇である『アルビオンの剣士』は、モデルとなったのが救国の英雄であった事から、検閲が通されたのだろう言われていた。その際、さるやんごとなきお方の鶴の一声もあったともいうが、真相は定かではない。
「す……凄いわね……本当に―――色々な意味で……」
熱狂の渦巻く劇場の中で、ルイズが呆れたような声をポツリと漏らした。
観客の姿はまるで現人神を崇めているかのよう。今にも新たな宗教が発生しそうな勢いである。
「そうね、凄い人気ね。ほらあれ見てごらんなさい」
スカロンがルイズの肩ちょんちょんとつつくと、観客席の一角を指差した。
疲れた顔でルイズがのろのろとスカロンが指差す方向に顔を向ける。すると、そこには数多くの女性がうっとりと顔を赤く染めている姿があった。そして、ルイズの耳に彼女たちの興奮気味の声が聞こえてくる。
「はぁん……やっぱり何度見ても素敵ね。剣士でありながらメイジを苦もなく倒してしまうなんて……でも結局お芝居なのよね。現実じゃメイジに剣士が勝てるわけないし」
「え? 何言ってるのあなた? この物語には実在のモデルがいるのよ。この劇も、あのアルビオンとの戦争で実際起きた事を元にしてるって聞いたわ。この物語の主人公のモデルになった御方がいたから、トリステイン軍は救われたのよ」
「知っていますわ。しかも、それだけではなく、最近ではガリアでも華々しい武功を立てられたと聞いてますわっ!」
ほぅ……と頬に手を当て未だ見ぬ英雄の姿を思い浮かべ陶酔する女たちを他所に、ルイズは隣で頭を抱えて蹲る士郎を見下ろした。
「……人気が出るとは思ってたけど、まさかこれ程とは思わなかったわね」
「今じゃシロウちゃんの人気は王さま以上のものがあるからねぇ」
「王さま以上、て……そう言えば、さっき劇に出てきたの、
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