第十六章 ド・オルニエールの安穏
第二話 悲喜劇
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家探しを一旦終了した士郎たち一行は、丁度昼時ということからトリスタニアにある『魅惑の妖精』亭へとやってきた。
最初、店に入るなり濃い顔に皿に濃い化粧を施したスカロン店長とエンカウントした凛が、思わず崩拳を打ち込みそうになるなどのトラブルが起きたが、それ以降は特に問題が起きる事はなかった。とは言え、何時もの外面の良さを発揮し、店員から以前ルイズがこの店で働いている事を聞いた凛がルイズを揶揄うというトラブルが起きたが……。
「まあ、似たような事はあたしも言われるけど、親戚なのは間違いないわよ」
「誰?」
「始めまして、かな? トオサカリン」
お盆で自身の肩を叩きながら挑戦的な目で凛をジェシカが見下ろす。
「へ〜……あなたがシエスタの従姉妹のジェシカさん、ね。始めまして遠坂凛よ。あなたの事は色々と聞かせてもらっているわ。でも、あなたもシエスタと同じように学院でメイドをしてるんじゃなかったかしら?」
「今日はメイドは休みなのよ。で、家に帰ったついで店の手伝いを、ね」
「仕事熱心―――いえ、家族想いなのね」
凛の言葉にひらひらとお盆を振る事で応えながら、ジェシカはにっこりと笑うと、テーブルの隅で小さくなって紅茶を飲んでいた士郎へ顔を寄せ―――。
「最近ご無沙汰なんだし、今度相手をしてよね」
周囲の他の客には聞こえないが、同じテーブルに座る者には聞こえる程度の絶妙な声でジェシカが士郎の耳元で囁いた。更におまけとばかりに士郎の頬にキスをしたジェシカは、小悪魔のように艶を帯びた笑みを凛へ向けると軽やかな足取りで一気に空気が鉛のように重くなった空気を纏い始めたテーブルから離れていく。
「…………お、俺も紅茶のお替りをもらおうか、な……」
「「「で、相手するの?」」」
示し合わせたように鼻を鳴らし、ジロリと睨みつけてくる凛たちの姿に、士郎はますます身体を小さくすると溜め息をつきポツリと呟いた。
「……仲が良いな」
食事を終え、食後のお茶も終わらせた士郎たちが、そろそろ店を辞そうかとすると、スカロン店長が困った様子で近付いて来た。
「今出るのは難しいかもしれないわよ。どうやらあなたがここに居るのがバレちゃったみたい」
「は? 誰にだ? 別に誰にここに居るのがバレても問題はないはずだが」
困惑の声を上げる士郎に、スカロン店長はチラリと店の外へと視線を向けた。士郎たちがスカロン店長の後を追うように顔を店の外へと向けると、そこには店を取り囲むかのように何やら見物客がずらりと並んでいた。空いてる席があるにも関わらず、店の中に入ってこない点からも客―――ではないようである。鈴なりに店の外から中を覗き込む見物客の目はただ一点に向けられていた。
ルイズや凛たちがその
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