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剣の丘に花は咲く 
第十六章 ド・オルニエールの安穏
第二話 悲喜劇
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言った筈なんだけど」
「それはこっちのセリフよっ!! って言うか何であなたが家を買うのにシロウが必要なのよっ!?」
「士郎にはそこ(購入する家)で色々と手伝ってもらう予定だから、一応あいつの意見も聞いておこうかという親切心からよ」
「だから何でそうなるのよっ!!」

 髪を振り乱しながら叫ぶルイズを宥めながら、シエスタが助けを求めるように一同から離れた位置で一人黄昏ている男に顔を向けた。
 シエスタの視線の先には、肩を落とし何やら虚ろな表情で空を見上げる男―――士郎の姿があった。

「……はぁ……凛。トリスタニアはそれなりに広い。今日はもうこれくらいにして、また日を改めて見に来ないか?」
「何よ士郎まで、まだ日は高いじゃない。まだあと二、三件は見れるでしょ」
「ああ、だが効率が悪すぎる。凛も自分で言っているだろ。家じゃなく土地が重要だと。なら、まずは土地を探した後、その土地の所有者と交渉して購入した方が早いんじゃないか」
「……はいはい、わかったわよ。全く、少しはこっちの気持ちを察しなさいっての……」

 何やら口を尖らせて小さくぶつぶつ言う凛の姿に首を傾げながらも、士郎はやっとこの現状から抜けられると安堵の息を吐いた。その時、遠くでこちらの様子を伺っていたヴェイユと視線があうと、どちらともなく苦笑いを交わしあった。
 





「へぇ〜、じゃ、一旦家探しは休みってわけなんだぁ」
「ああ、と言っても、問題は家ではなく土地なんだがな」
「ん? それってどういうことぉ? 住む家を探しているのよねぇ?」
「あ〜……そこがちょっとな……」
「ん?」

 スカロン店長と士郎の会話を横で聞いていた凛は、傾けていたティーカップをゆっくりとテーブルに戻した。

「実の所、一応は目処が立っているんだけど。その土地が問題なのよ」
「あらそうなの? で、その問題って何かしら?」

 ずいっと顔を寄せてくるスカロン店長の濃い顔が間近に迫ってくる。凛は冷静な顔のまま気付かれない程度の巧みな動きで椅子に座った状態で後ずさった。

「……その土地の所有者が大物なのよ。それと、お替わりを頂いても良いかしら? 流石士郎が勧めただけあって、料理だけでなくてお茶も良いわね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。今入れてあげるから待っててね」

 ルンルンと鼻歌を歌いながらキッチンへと向かうスカロン店長の後ろ姿を何処か疲れた顔で見ていた凛は、隣の席に座るシエスタへと疑いの視線を向けた。

「やっぱりあの店長とあなたが親戚だなんて信じられないわね」
「そ、そうですか?」

 「あはは……」と笑いながらシエスタが離れた位置からでもハッキリとわかる後ろ姿―――スカロン店長の鍛えられた広背筋を見てタラリと額に汗を流した。

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