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街路で
4部分:第四章
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リスト教が来る前からだとな」
「それも考えてみれば当然か?」
 しかしこうも考えるのだった。
「それも」
「そうなるか」
「そうじゃ。キリストは確かにいい神じゃ」
 老人もそのことは認めた。認めながらそのうえで首にかけているものを出す。それは主がいる十字架だった。キリスト教の十字架である。
「しかしじゃ。その神とは違う神もいるのじゃよ」
「それがこの神様ってわけか」
「ケツアルカトルか」
「そういうことじゃ。そして今回あんた達はじゃ」
 老人はさらに言ってきた。二人を見上げながら。
「その神様に助けられたということじゃ」
「そうか。最初はわからなかったけれどな」
「俺達も助けられたんだな」
「そういうことじゃ。ではそのケツアルカトルの十字架はじゃ」
 二人に顔を向けながらまた言う。老人の顔は自然と笑ってきていた。そのうえでの言葉であった。
「あんた達に渡しておくからのう」
「ああ、悪いな」
「じゃあ俺達はこの神様も」
 二人はその神の十字架を見ながら。また話した。
「信じさせてもらうか」
「信じる神様は一つじゃなくてもいいみたいだしな」
「そういうことじゃ。だから渡しておくぞ」
 老人は最後に笑った。このうえなく明るい笑顔であった。その笑顔で二人を見上げてそれで言ったのであった。まるでそれこそが言いたいことであったかの様に。


街路で   完


                 2009・10・12

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