暁 〜小説投稿サイト〜
アニー
7部分:第七話
[1/8]

[8]前話 [1] 最後

第七話

 ヘンリーは盛んに繁華街へ行くようになった。そして手当たり次第にあちこちの酒場に入る。アニーに乗って店へと向かうのであった。
「あら、珍しいわね。ここへ来るなんて」
 知り合いのホステスに声をかけられた。このホステスの離婚問題の際に仕事をしたことがある。それから知り合いになった。外見は派手だが気のいい女である。今は年下の恋人がいるらしい。名をミスティという。
「何を飲みたいのかしら」
「バーボンがいいね」
 ヘンリーはにこりと笑ってそれに応えた。
「ボトルをキープしてね」
「たまたま入ってきてキープなんて。飲む気満々ね」
「お酒は嫌いじゃないのは知ってるだろう?」
「ええ、まあ」
 ヘンリーは煙草はやらないが酒は好きだ。ウイスキーもバーボンも浴びるように飲む時がある。
「じゃあ頼むよ。ひょっとしたら今日で一本空けるかも知れない」
「あら、強気ね」
「飲めるさ、それ位」
 彼は言った。
「じゃあ賭けるかい?僕がボトル一本今日一日で空けられるかを」
「悪くないわね」
 ミスティはそれを聞いて面白そうに微笑んだ。彼女が賭け事を好きなのを知っての言葉だ。
「賭けるのは何かしら」
「そうだね」
 ここまでは彼の計算の範囲内だ。チラリと駐車場を見る。アニーが夜の闇の中に停まっていた。
「君にボトルを二本奢るというのはどうだい?僕が飲むのと同じラベルのをね」
「気前がいいわね」
 更に乗り気になった。これも計算のうちだ。彼女は酒も好きなのである。
「じゃあそれでいいね」
「ええ」
 こうして賭けは決まった。彼は店の中に入りカウンターに座ると早速バーボンを手にした。ラベルは彼がいつも飲んでいるお気に入りのものだ。かなり高級なものである。
「いいの?これ、かなり効くわよ」
「知ってるよ」
 彼は余裕を以って頷いた。
「だからこそ飲むんだよ。そうでないと面白くないだろう?」
「ええ」
「殺鼠はじめるよ。いいね」
「それじゃ。時間は?」
「そうだね」
 彼は店の時計を見て考えた後で言った。
「一時間だ。いいね」
「わかったわ。それじゃ」
「うん」
 彼は飲みはじめた。ボトルの中の茶色の魔法の水を瞬く間に飲み干していく。そしてそれを完全に空にした時に丁度一時間となっていた。
「どうかな」
「やるわね。あたしの負けね」
「そうだね。けれどまだ飲めそうだ」
「あら、大丈夫なの?」
 ミスティは彼に微笑みながら言った。
「一本空けたのに」
「どうも今日は調子がよくてね。まだ飲めそうなんだ」
「本当に?」
「ああ。だからもう一本。また賭けるかい?」
「今度は何かしら」
「僕の家にあるワインのラベルを全部。それでいいかな」
「確か貴方の家のワインには」
「そうさ、トカイがあ
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ