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アニー
7部分:第七話
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る」
 彼はニヤリと笑って答えた。欧州で王族達が親しんだ半ば伝説となっているワインだ。甘みの強い、美味い酒である。値もかなりする。
「トカイ」
 それを聞いたミスティの喉がゴクリ、と鳴った。
「それでいいかな」
「勿論よ」
 彼女は目を輝かせてそれに頷いた。
「けれど本当にいいのね?」
「何がだい?」
「トカイなんてよ。そんな高いお酒。本当に譲ってくれるの?」
「おいおい、まだ君が勝つと決まったわけじゃないよ」
「それはそうだけど」
 しかし彼女はもう賭けに勝った気分だった。今のヘンリーの酔いぶりから見ればそれも当然であった。
「けれど、本当にいいのね?」
「ああ」
 ヘンリーは頷いた。
「じゃあ時間は一時間でね。それでいいね」
「ええ」
 今度はミスティが頷いた。
「それじゃあはじめようか」
 こうしてヘンリーはまた飲みはじめた。相変わらず見事な飲みっぷりである。そして全て飲み終えたところで彼はグラスを置いた。
「僕の勝ちかな」
「残念だけれど」
 ミスティは首を横に振った。
「貴方の負けよ。時計を見て」
 そう言いながら壁に掛けられていた時計を指差す。
「ちぇっ」
 ヘンリーはそれを見てわざと悪態をついた。一分遅れであったのだ。
「一分位いいじゃないか」
「時間はきちんと守るのが貴方の主義じゃなかったかしら」
 ミスティはからかうような口調で彼に言った。
「弁護士なんだし。どうかしら」
「わかったよ」
 彼は苦い顔を作ってそれに頷いた。
「君の勝ちだ。約束通りトカイは全部あげるよ」
「有り難う」
 彼女はそれを聞いて微笑んだ。
「じゃあ有り難く貰うわね」
「ああ。けれどただ一つ問題があるんだ」
「何かしら」
「今僕はお酒が入っているね」
「ええ」
「車を運転するわけにはいかないんだ。家まで頼めるかな。帰りのタクシー代は出すから」
「ああ、そんなことだったの」
 ミスティはそれを聞いておかしそうな笑みになった。
「いいわ、喜んで」
「優しいんだね」
「当然でしょ、トカイの為だもの」
「僕の為じゃなくて」
「悪いけれど貴方はタイプじゃないのよね」
「おやおや」
「けれどいいわ。運転は任せて」
「お願いするよ」
「今から行くわね」
 こうして彼女はアニーに向かった。ヘンリーは酔ってはいるが確かな足取りでアニーに進んだ。そしてゆっくりとした動作で助手席に座った。運転席にはミスティがもういた。
「行くわよ」
「うん。カーナビあるからそれに従ってね」
「ええ」
 こうして二人はアニーに乗ってヘンリーの家に向かった。その途中でヘンリーはミスティに尋ねた。
「乗り心地はどう?」
「悪くないわ」
 彼女は答えた。
「凄くいいじゃない。こんな車はじめて
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